このページでわかること
・住宅宿泊事業法の民泊の施設数と近年の推移
・旅館業法の簡易宿所の施設数と近年の推移
いずれも都道府県ごと(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・静岡・長野)
貸別荘を開業する際には、周辺地域の競合施設数の多さも重要な検討要素になります。単純に競合施設が少ないからいいというわけではなく、少ないには少ないなりの理由がある(アクセスが悪いので集客しづらい、法令上宿泊施設の開業が難しい地域である、など)というのも事実です。
貸別荘を営業する際には、①住宅宿泊事業法に基づく民泊届出 ②旅館業簡易宿所営業許可 ③特区民泊 の3つの方法で営業許可を取得します。
特区民泊は限られたごくわずかの地域でしか営業することはできません。そのため、基本的には①住宅宿泊事業法に基づく民泊届出 もしくは②旅館業簡易宿所営業許可 のいずれかで営業許可を取得することになります。
各都道府県の施設数については、民泊届出施設数については民泊ポータルサイト(厚生労働省)、旅館業営業施設数については宿泊旅行統計調査(観光庁)にて公表されています。
そこでこのページではこれらの公表数値をもとに、関東周辺の都道府県について、近年の施設数の推移をまとめました。
2021年以降の施設数の推移
それでは早速施設数の推移を見ていきましょう。
旅館業簡易宿所営業施設の数の推移
簡易宿所営業施設には、一棟貸し宿泊施設やカプセルホテル、ペンション、スキー小屋、ホステル、グランピング場などの営業形態が含まれています。
コロナ禍以降大きな増減のある地域はない
各都道府県、微妙な数値のズレはあるものの大きな増減が認められる地域はありません。統計数値の誤差が含まれていることを勘案すると、ほぼ横ばいで推移しているといって良いでしょう。
長野県がずば抜けて多い
簡易宿所営業の施設数は、長野県が圧倒的に多いことがグラフからもわかります。全国でも沖縄・京都に次ぐ多さとなっています。長野県はペンションやスキー小屋等として簡易宿所営業許可を取得していることが推測されます。また、長野県には国内有数の別荘地である軽井沢も所在していますので、貸別荘として営業をしている施設の多さが影響していることも予想されます。
静岡県・千葉県・山梨県はほぼ同程度に多い
伊豆・熱海といった人気観光地を有する静岡県や、富士山の麓である山梨県、関東からのプチ旅行地で人気の房総半島のある千葉県は、700~800施設程度とそれぞれ同程度の施設数となっており、関東周辺では長野に次いで多い地域となっています。
次いで神奈川県・栃木県と続く
箱根や那須など、都内からアクセスしやすく人気観光地を有する神奈川県・栃木県は共に500施設程度で、上位県に次ぐ施設数となっています。
群馬県はそれほど多くない
群馬県は300施設程度で簡易宿所の施設数はあまり多くはありません。伊香保温泉や草津温泉など人気温泉地が所在しているため、旅館やホテルの施設形態に宿泊客が流れやすいため、温浴施設を有さない限りは簡易宿所営業としては苦戦することも考えられます。
茨城県・埼玉県は少ない
茨城県・埼玉県は100施設前後で施設数は少ないです。両県とも他の都道府県に比べ宿泊観光需要が低いため、開業しても集客が見込めないための少なさであると考えられます。
民泊届出施設の数の推移
民泊届出施設の数には、自分が住んでいる家の一室を貸したり別荘として所有している建物を貸し出すいわゆる「貸別荘」にあたるもので、年間の営業日数が180日以内である施設が含まれます。
民泊は各都道府県とも微増傾向にある
民泊の施設数はどの地域においても緩やかに増加していることがわかります。空き家や保有資産の有効利用として注目される活用方法であり、民泊の届出は旅館業の簡易宿所営業許可よりも要件が易しく参入しやすいことが要因であると推測されます。
大人数で安価に宿泊が可能な民泊施設は外国人旅行客に人気です。今後はインバウンド利用として民泊施設の需要が高まることが予想されるので、ますます民泊の注目度は高まっていくと考えられます。
千葉・神奈川の施設数が多い
上記の表には東京は含まれていないのですが、東京には23区だけで7000を超える施設が存在しています。にも拘わらず、東京の民泊稼働率は推定で60%程度を維持しており、東京周辺の民泊需要は高いことが期待できます。
東京に行き来しやすい千葉・神奈川も東京観光時の滞在拠点として候補に入ります。加えて、千葉・神奈川自体には魅力的な観光地が多数存在しており、宿泊需要を反映した施設数の多さと考えられます。
栃木は他県に比べて増加率が大きい
近年における民泊の施設数の増加率が、他県よりも比較的高い施設が栃木県です。
栃木県にある那須地域は別荘地としても有名です。周辺には人気レジャースポットも多数存在しているので、保有別荘の未使用時に民泊として貸し出す人が多いことが推測されます。
静岡、埼玉、山梨と続く
静岡、埼玉、山梨と概ね同程度の施設数です。東京近接県である埼玉は、前述したように東京周辺観光の宿泊拠点として選択される可能性が見込めるため、一定の民泊需要を反映した施設数であると考えられます。
簡易宿所営業の施設数は他県よりも多い静岡、山梨は、民泊施設数はそこまで多くありませんでした。
茨城・群馬・長野は少ない
茨城、群馬の民泊届出施設数は少ないです。両県とも簡易宿所営業同様の背景が考えられます。
一方、長野に関しては簡易宿所営業施設数が圧倒的に多いことに反して、民泊届出施設数は少ない現状です。民泊の稼働率が低く推移していることからも、長野県には民泊をはじめとした一棟貸しの需要よりも、スキー小屋やペンション等への宿泊需要が高いことの裏付けであると考えられます。
旅館業の他の営業形態の施設数
宿泊旅行統計調査では簡易宿所営業の他にも、旅館、リゾートホテル、ビジネスホテル、シティホテルなどの施設数についても公表しています。
参考までに、上記営業形態の施設数についても、同様に推移をグラフ化しました。
旅館
リゾートホテル
ビジネスホテル
シティホテル
ビジネスホテルとシティホテルの違いとは?
ビジネスホテルは出張等のビジネス旅行の宿泊を前提に運営されるホテルである一方、シティホテルは都心にあり、スパやレストラン等滞在の快適性やサービスの充実度に長けたホテルです。
使用データ
宿泊旅行統計調査-調査結果・集計表(2021年分~2023年10月分)/観光庁
住宅宿泊事業法の施行状況-各自治体の届出状況(R3.1.12分~R5.11.15分)/民泊制度ポータルサイト
コメント