このページでわかること
・客室稼働率、定員稼働率の意味と違い
・2022年4月~2023年7月の民泊の客室稼働率の推移と期間平均
(茨城・栃木・群馬・埼玉・東京・千葉・神奈川・山梨・静岡・長野)
2023年11月時点で、住宅宿泊事業法に基づく届出を行っている民泊施設は21,488件と発表されています。(住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧/民泊制度ポータルサイトより)
民泊施設の宿泊実績は2ヶ月毎に公表されており、その数値から都道府県ごとの稼働率やインバウンド需要を読み取ることができます。
そこでこのページでは、関東周辺都道府県の稼働率を時系列式にまとめました。民泊施設の宿泊需要が見込める都道府県の考察と推測も行っているので、参考にしていただけると幸いです。
宿泊業界における重要指標「稼動率」とは?
宿泊業界においては営業実績を示す指標として「稼働率」が用いられます。稼動率には「客室稼働率」と「定員稼働率」の2種類があり、それぞれ意味合いが異なります。
客室稼働率
一定期間における、総客室数に対する利用客室数の割合。
例えば、2名定員の部屋を10室有するホテルのある日の宿泊室数が5室の場合、客室稼働率は【5÷10=0.5】で50%となります。
定員稼働率
一定期間における、総収容人数に対する延べ宿泊人数の割合。
例えば、2名定員の部屋を10室有するホテルのある日の宿泊室数が5室・利用客数が8名の場合、定員稼働率は【8÷20=0.4】で40%となります。
どちらの指標を使う?
客室稼働率・定員稼働率のどちらを利用したほうがより営業成績を把握できるかは、宿泊施設の営業形態によります。
上の例のように、主に定員人数が複数名(2名以上)の部屋を有するホテルで、料金形態も人数課金制(1室あたりでなく1名あたりの料金)の場合、定員稼働率の指標の方がより売上に近い数値になります。
一方、一棟貸しのコテージなどで何名宿泊しても同一料金といった料金形態を採用している場合、客室稼働率の方が売上を把握しやすい数値になります。
民泊の場合は?
民泊においても人数課金制を用いるか、棟貸し料金とするかは施設によって異なるところです。目指す売上やターゲット層によってどちらを採用した方がよいかも変わります。
民泊制度ポータルサイトにて公表されている数値から算出できるのは客室稼働率の為、本記事では客室稼働率を集計してまとめています。
客室稼働率の算出方法
民泊ポータルサイトで公表されている「住宅宿泊事業の宿泊実績について」における都道府県ごとの宿泊日数を元に集計しました。
民泊ポータルサイトで発表されている数値は2ヶ月ごとのデータです。宿泊日数の数値は2ヶ月間、つまり約60日間の平均宿泊日数ということになります。
住宅宿泊事業における民泊は年間の宿泊日数が180日間までという制約があります。そのため、宿泊日数を60で割るだけでは純粋な稼働率を算出することができません。
そこで、
宿泊日数の実績÷2ヶ月間の合計日数×(365÷180)
という式で客室稼働率を算出することにより、年間上限180日間に対する客室稼働率を算出することにしました。
民泊の客室稼働率
関東周辺の10都道府県において、コロナ禍が明けだした2022年4月以降の客室稼働率をまとめました。
また、当期間における客室稼働率の平均は以下の通りです。
茨城 | 栃木 | 群馬 | 埼玉 | 千葉 | 東京 | 神奈川 | 山梨 | 静岡 | 長野 | 平均 |
26.1 | 38.6 | 36.0 | 28.9 | 40.2 | 43.3 | 39.7 | 29.7 | 28.5 | 22.3 | 33.3 |
東京
東京の客室稼働率は季節を問わず60%前後と極めて高い水準で推移しています。
国籍別宿泊内訳をみると、東京の外国人の宿泊者数は極めて多く、インバウンド需要が大きく影響していると考えられます。
千葉・神奈川
千葉、神奈川の客室稼働率は関東周辺では東京に次いで高く、両県とも40%~50%程度で推移しています。
千葉、神奈川はそれぞれに観光地を有しており、県として単独で観光客を入り込んでいるほか、東京に出やすいことから地方からの東京旅行の宿泊拠点として機能していることが考えられます。
栃木・群馬
栃木、群馬の客室稼働率は30%~40%程度を推移しており、東京隣接県ほどではないものの安定した稼働を維持しています。
栃木の方が観光需要が高く、春や夏などレジャー需要が高まる季節には他県よりも稼働率が高くなることもあります。
埼玉
埼玉の客室稼働率は30%~40%程度で推移していますが、埼玉自体の観光需要が他県に比べて低いため、レジャーシーズンでも稼働率が高くなることはありません。
埼玉は東京へのアクセスもよく、地方からの東京旅行の宿泊拠点として利用されていることが考えられます。
山梨
山梨の客室稼働率は他県に比べて繁閑の差が大きいことが特徴的です。
冬場のレジャー閑散期には稼働率が20%と低い一方、春の観光シーズンには50%近くの稼働率となります。
茨城・静岡・長野
茨城・静岡・長野の客室稼働率は20%~30%程度で平均よりも低く推移しています。
茨城はもともと宿泊需要があまり見込めない地域のため低いですが、静岡・長野に関しては、ホテルや旅館といった別の宿泊形態の施設へ宿泊客が流れていることが考えられます。
使用データ
住宅宿泊事業の宿泊実績(令和4年4-令和4年5月分~令和5年6-令和5年7月分)/民泊制度ポータルサイトより
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