
神奈川県では、民泊新法(住宅宿泊事業)の届出先が、県の保健福祉事務所と、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市・藤沢市・茅ヶ崎市(寒川町を含む)の6市に分かれています。条例による営業の制限は、県の条例が箱根町の一部に、横浜市の条例が市内の低層住居専用地域にかかります。この記事では、物件の所在地から届出先と制限を確かめる順番と、窓口別・市町村別の届出件数をまとめています。
結論:所在地で、届出先と条例の制限が決まる
神奈川県で民泊新法の届出をするときは、まず物件の所在地から、届出先と条例の制限を確かめます。
| 所在地 | 届出先 | 条例による制限 |
| 横浜市 | 横浜市(医療局 生活衛生課) | 第一種・第二種低層住居専用地域で、月曜正午から金曜正午まで営業できない |
| 川崎市 | 川崎市(経済労働局) | なし(市のページに明記) |
| 相模原市 | 相模原市(保健所 生活衛生課) | 市のページに記載なし |
| 横須賀市 | 横須賀市(保健所 生活衛生課) | なし(市の資料に明記) |
| 藤沢市 | 藤沢市(保健所 生活衛生課) | 市のページに記載なし |
| 茅ヶ崎市・寒川町 | 茅ヶ崎市(保健所 衛生課) | 市のページに記載なし |
| 上記以外の県内の市町村 | 神奈川県(地域の保健福祉事務所・センター) | 箱根町の一部(第1種観光地区)で、3〜5月・8月・10〜11月は営業できない |
住宅宿泊事業法では、保健所を置く市が民泊の事務を行う場合、その市長が届出を受け付けます(住宅宿泊事業法 第3条第1項)。神奈川県では、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市・藤沢市・茅ヶ崎市がこれにあたり、寒川町は茅ヶ崎市の所管です(神奈川県「かながわ民泊相談窓口」)。鎌倉市や小田原市のように、県の保健福祉事務所が窓口になる市もあるので、市の名前だけで判断しないようにします。
届出先の一覧
県の保健福祉事務所(センター)と所管地域
6市と寒川町以外の市町村は、県の保健福祉事務所(センター)が届出先です。所管地域と、県の一覧(2026年6月30日時点)から数えた届出住宅の件数は次のとおりです。
| 届出先 | 所管地域と届出件数 |
| 平塚保健福祉事務所 | 平塚市 2件、大磯町 9件、二宮町 7件 |
| 平塚保健福祉事務所 秦野センター | 秦野市 23件、伊勢原市 5件 |
| 鎌倉保健福祉事務所 | 鎌倉市 183件、逗子市 34件、葉山町 47件 |
| 鎌倉保健福祉事務所 三崎センター | 三浦市 32件 |
| 小田原保健福祉事務所 | 小田原市 28件、箱根町 76件、真鶴町 9件、湯河原町 13件 |
| 小田原保健福祉事務所 足柄上センター | 南足柄市 11件、中井町 0件、大井町 11件、松田町 2件、山北町 3件、開成町 1件 |
| 厚木保健福祉事務所 | 厚木市 3件、海老名市 1件、座間市 3件、愛川町 3件、清川村 1件 |
| 厚木保健福祉事務所 大和センター | 大和市 14件、綾瀬市 1件 |
連絡先は、神奈川県「かながわ民泊相談窓口」に載っています。窓口で相談するときは、電話で予約してから行くよう県が案内しています(鎌倉保健福祉事務所のページ)。
6市の窓口
- 横浜市:医療局 健康安全部 生活衛生課
- 川崎市:経済労働局 観光・地域活力推進部(保健所ではなく、観光の部署が担当)
- 相模原市:保健所 生活衛生課
- 横須賀市:保健所 生活衛生課
- 藤沢市:保健所 生活衛生課
- 茅ヶ崎市:保健所 衛生課(寒川町の届出も受け付ける)
条例による制限
住宅宿泊事業法 第18条では、都道府県と、民泊の事務を行う保健所設置市が、条例で区域を定めて、営業できる期間を制限できます(住宅宿泊事業法)。神奈川県では、県と横浜市がこの条例を定めています。
神奈川県の条例:箱根町の一部で、繁忙期は営業できない
住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第18条の規定により、住宅宿泊事業の実施を制限する区域及び期間は、次の表のとおりとする。
住宅宿泊事業法第18条の規定による住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例 (平成30年神奈川県条例第26号)
| 区域 | 営業できない期間 |
| 第一種低層住居専用地域のうち、箱根町特別用途地区建築条例 第3条に規定する第1種観光地区である区域 | 3月1日正午〜6月1日正午、8月1日正午〜9月1日正午、10月1日正午〜12月1日正午 |
対象は箱根町の一部だけで、県所管域のほかの市町村には、条例による制限はありません。箱根町で民泊を考える場合は、物件が制限区域にあたるかを、箱根町の都市整備課で確認するよう県が案内しています(制限区域の参考地図)。制限区域にある物件では、春・夏・秋の繁忙期に営業できないため、売上の見込みが大きく変わります。
横浜市の条例:低層住居専用地域では、平日は営業できない
横浜市の条例では、第一種・第二種低層住居専用地域を制限区域とし、月曜日の正午から金曜日の正午までを営業できない期間としています(横浜市住宅宿泊事業の実施に関する条例 第2条・第3条)。敷地が区域の内外にまたがる場合は、敷地の2分の1以上が区域内にあれば、敷地全体が制限の対象になります。祝日などの休日とその前日、1月2日・3日は、正午から翌日の正午まで制限の対象外です(横浜市例規集)。
つまり、低層住居専用地域では、主に金曜日の正午から月曜日の正午までと、休日の前後に営業する計画になります。平日の稼働を前提にした収支は成り立たないので、物件を選ぶ段階で用途地域を確認します。
そのほかの市
川崎市は、条例による区域を定めた営業日数の制限はしていないと、市のページで明記しています(川崎市)。横須賀市も、事前確認用の資料で制限の条例はないとしています。相模原市・藤沢市・茅ヶ崎市は、市のページに条例による制限の記載がありません。届出の前に、各市の窓口で確認しておきます。
2026年7月の通知と、今後の条例の動き
2026年7月15日、観光庁などは自治体に「ゼロ日規制等について」を通知し、条例で新たな民泊を禁止したり、営業日を限ったりできることを示しました(観光庁の報道発表)。神奈川県内では、鎌倉市が、県の条例で区域や期間を定めて民泊を制限するよう、県に要望しています(鎌倉市民泊ガイドライン)。2026年10月時点で、県や各市が条例を改正したという公表は確認できませんが、今後変わる可能性があります。物件を決める前に、届出先の窓口で最新の状況を確認します。
鎌倉・逗子・葉山で始める場合
県所管域の届出住宅522件のうち、鎌倉市が183件、葉山町が47件、逗子市が34件で、合わせて半数を超えます(県の一覧、2026年6月30日時点)。なかでも鎌倉市は、2025年12月に市独自の「鎌倉市民泊ガイドライン」を作り、民泊を始める人と事業者に守ってほしい事項を示しています。ガイドラインに法的な強制力はありませんが、市内の状況として、海沿いの地域に民泊が集中し、家主不在型の民泊への地域の抵抗感が強いことが書かれています。
ガイドラインで求められること
- 自治会等への事前周知:県の指導指針による周辺住民への周知と同じ要領で、自治会等にも知らせる。所在地の自治会は、市の地域のつながり課で確認する
- 説明会:自治会や周辺住民から説明会や個別の説明を求められたら応じる。求められなくても、事業を始めることと緊急連絡先を自治会に伝えておく
- 住民協定・地区計画の確認:住民協定や地区計画で、民泊の禁止を定めている地域がある
- 開業後の配慮:騒音、ごみ、火災予防、路上喫煙、路上駐車、苦情への対応、災害への備え、外国人宿泊者への対応
市街化調整区域の物件
鎌倉市は、市街化調整区域にある「属人性を有する建築物」(農林漁業者用住宅など)で、事業者が住まずに民泊をすることは、都市計画法に違反するとしています。市街化調整区域の物件は、届出の前に市の開発審査課に相談します(鎌倉市)。藤沢市も、市街化調整区域の建物は、事前相談の申込書を出して、民泊に使えるかを確認するよう求めています(藤沢市)。
届出件数(窓口別)
観光庁が公表している、届出先ごとの届出住宅数(2026年9月15日時点)は次のとおりです。県内の合計は1,328件です。
| 届出先 | 届出住宅数 |
| 神奈川県(県所管域) | 545件 |
| 横浜市 | 349件 |
| 横須賀市 | 144件 |
| 川崎市 | 113件 |
| 藤沢市 | 100件 |
| 茅ヶ崎市(寒川町を含む) | 49件 |
| 相模原市 | 28件 |
| 合計 | 1,328件 |
県所管域の内訳は、前の「届出先の一覧」の表のとおりで、鎌倉市・葉山町・逗子市・三浦市の湘南・三浦半島と、箱根町に集まっています。県所管域の件数(522件)は県の一覧の2026年6月30日時点、窓口別の件数は観光庁の9月15日時点のため、数字は一致しません。件数は届出の数で、実際に稼働しているかどうかは表しません。観光庁の集計では、2026年6〜7月の神奈川県の届出住宅1件あたりの宿泊日数は14.6日で、全国の15.4日をやや下回る水準です(観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績について」)。
届出から営業開始までの流れ
県所管域の流れは次のとおりです。6市は、それぞれの市の案内に従います。
- 事前確認用のチェックシートで要件を確かめ、届出先の保健福祉事務所に相談する(窓口に行くときは電話で予約)
- 関係機関に相談する:消防署(消防法令適合通知書)、建築基準法の担当部署、市町村のごみの担当部署。建築協定などの地域のルールも確認する
- 届出日までに、周辺住民に書面などで知らせる(下記)
- 民泊制度運営システムで届出をする(インターネットが使えない場合は窓口に書面で提出)
- 届出番号の通知を受け、標識を掲げて営業を始める
周辺住民への事前の周知(県の指導指針)
県の指導指針では、届出をしようとする日までに、周辺住民に書面などで事業を始めることを知らせ、その報告書を届出書に添付するよう定めています(神奈川県「住宅宿泊事業の適正な運営に関する指導指針」)。
| 項目 | 内容 |
| 周知する相手(戸建て) | 敷地に隣接するか、敷地の境界線から原則10m以内の敷地の建物に住む住民 |
| 周知する相手(共同住宅) | 管理組合か、その建物に住む住民と、建物の外壁から原則10m以内の敷地に住む住民 |
| 書面に書くこと | 事業者の氏名(法人は名称と代表者名)、住宅の所在地、事業の開始予定日、問合せ先(担当者名と電話番号) |
| 届出書に添付する報告書 | 周知した日時、周知先、周知先からの問合せの内容 |
指導指針は県所管域のものです。6市でも、近隣への事前の説明を求めている場合があるので、各市の案内を確認します。
実務では、改修工事を伴う場合、事前相談から届出の受理まで1年近くかかることもあります。工事の期間中も家賃やローンはかかるため、開業時期は余裕をもって見込んでおきます。
旅館業(簡易宿所)で営業する場合
条例の制限を受けずに通年で営業したい場合は、旅館業法の許可を検討します。条例による制限は住宅宿泊事業(民泊新法)にかかるもので、旅館業の許可には及びません。その代わり、旅館業では、ホテル・旅館が建てられる用途地域であること、建物の確認済証・検査済証、学校などからの距離(おおむね100m)といった条件があり、横浜市の低層住居専用地域ではホテル・旅館は建てられません。窓口は物件を管轄する保健所(県の保健福祉事務所か、保健所を置く市の保健所)です。
実務でつまずきやすい点
届出先を取り違える
寒川町は茅ヶ崎市、鎌倉市や小田原市は県の保健福祉事務所が届出先です。届出先によって、事前相談の受け方や求められる書類の細かい点が違うことがあるので、最初に確認します。
横浜市の低層住居専用地域で、平日の稼働を前提にする
横浜市の低層住居専用地域では、平日は営業できません。物件の資料に用途地域が書かれていない場合は、市の都市計画の情報で確認してから収支を組みます。
箱根町で、制限区域かどうかを確かめずに契約する
箱根町の制限区域では、春・夏・秋の繁忙期に営業できません。別荘地の物件は、契約の前に町の都市整備課で区域を確認します。
住民協定・建築協定を見落とす
鎌倉市では、住民協定や地区計画で民泊の禁止を定める動きがあります。県の指導指針も、建築協定などの地域のルールを事前に確認するよう求めています。用途地域だけで判断しないようにします。
よくある質問
横浜市の低層住居専用地域では、平日は一切泊められないのですか?
条例では、月曜日の正午から金曜日の正午までは営業できません。祝日などの休日とその前日、1月2日・3日は、正午から翌日の正午まで制限の対象外です。旅館業の許可で営業する場合はこの制限を受けませんが、低層住居専用地域ではホテル・旅館は建てられません。
鎌倉市で民泊はできますか?
2026年10月時点で、鎌倉市には条例による制限はなく、民泊新法の届出はできます。届出先は県の鎌倉保健福祉事務所です。ただし、市の民泊ガイドラインで自治会への事前周知などが求められているほか、住民協定や地区計画で民泊を禁止している地域があります。市は県に条例での制限を要望しているため、今後の動きも確認が必要です。
川崎市で民泊をするときの窓口はどこですか?
川崎市では、経済労働局の観光・地域活力推進部が民泊新法の届出の窓口です。市は条例による営業日数の制限をしていません。
関東のほかの都県の民泊ガイド
届出先や条例による制限は、都県によって大きく違います。物件を比べるときは、所在地の都県のガイドもあわせて確認してください。
- 東京都:23区の条例と届出窓口の一覧
- 埼玉県:県観光課への届出と、川口市の条例
- 千葉県:県への届出と、市町村別の確認先
- 栃木県:健康福祉センターへの届出と、那須町の宿泊税
- 群馬県:県への届出と、条例・告示の扱い
まとめ
- 神奈川県の民泊新法の届出先は、県の保健福祉事務所と、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市・藤沢市・茅ヶ崎市(寒川町を含む)に分かれる
- 県の条例は、箱根町の一部(第1種観光地区)で、3〜5月・8月・10〜11月の営業を制限している
- 横浜市の条例は、低層住居専用地域で、月曜正午から金曜正午までの営業を制限している
- 県所管域では、届出日までに周辺住民へ書面で知らせ、報告書を届出書に添付する
- 鎌倉市は独自のガイドラインで自治会への周知などを求め、県に条例での制限を要望している
- 県内の届出住宅は1,328件(2026年9月15日時点)。湘南・三浦半島と箱根、横浜市に多い
参考資料
- 住宅宿泊事業法(e-Gov法令検索)
- 神奈川県「民泊(住宅宿泊事業法)のページ」
- 神奈川県「かながわ民泊相談窓口」
- 住宅宿泊事業法第18条の規定による住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例(神奈川県)
- 神奈川県「制限区域の参考地図」
- 神奈川県「住宅宿泊事業の適正な運営に関する指導指針」
- 神奈川県「住宅宿泊事業施設一覧(令和8年6月30日現在)」
- 神奈川県「市町村事業系ごみ窓口」
- 横浜市「住宅宿泊事業(民泊)の届出について」
- 横浜市住宅宿泊事業の実施に関する条例
- 川崎市「住宅宿泊事業(民泊)の届出についての御案内」
- 相模原市「住宅宿泊事業(民泊)について」
- 横須賀市「民泊について」
- 藤沢市「住宅宿泊事業法(旅館業の許可によらない「民泊」)について」
- 茅ヶ崎市「民泊(旅館業法と住宅宿泊事業法)について」
- 鎌倉市「鎌倉市民泊ガイドライン」(2025年12月1日作成)
- 観光庁「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」(令和8年9月15日時点)
- 観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績について(令和8年6月-令和8年7月)」
- 観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について」(2026年7月15日)
法令・制度の情報は2026年10月時点で確認したものです。






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