遠方の実家をどう守る?巡回管理サービスの内容と、将来の「争続」を防ぐ事前対策

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「実家が遠方にあって、なかなか様子を見に行けない」「親が施設に入って実家が空き家になったが、管理まで手が回らない」——核家族化と都市部への人口集中が進む中で、遠く離れた実家の管理に悩む人が急増しています。年に数回しか帰省できず、その間に建物は傷み、庭は荒れ、気づけば近隣から苦情が来ていた、という事態は決して珍しくありません。

遠方の実家を放置するリスクは、建物の劣化だけにとどまりません。管理不全による特定空家・管理不全空家への指定、近隣トラブル、そして将来兄弟間で起きる相続争い(いわゆる「争続」)——これらは早めに手を打たなければ、後から大きな代償を払うことになります。

この記事では、遠方の実家を守るための現実的な手段である「空き家管理サービス」の内容と費用、そして将来の争続を防ぐための事前対策を解説します。

遠方の実家を放置するとどうなるか

遠方にある実家を適切に管理せず放置すると、複数のリスクが連鎖的に発生します。まず建物面では、換気がされないことによるカビ・湿気の発生、水道を使わないことによる排水管の乾燥と悪臭、雨漏りの放置による構造材の腐食が進みます。人が住まない家は、住んでいる家よりも急速に傷むことが知られています。

敷地面では、草木の繁茂が最も多い問題です。庭木や雑草が伸び放題になり、隣地への越境・落ち葉の飛散・害虫の発生などで近隣に迷惑をかけることになります。これが近隣からの苦情につながり、市区町村による調査のきっかけになります。

そして最も深刻なのが、管理不全の結果として特定空家・管理不全空家に指定されるリスクです。2023年の空家対策特別措置法改正により、管理が不十分な空き家は「管理不全空家」として勧告の対象となり、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除されて税額が最大6倍に増加します。遠方で目が届かないからこそ、管理不全に陥りやすく、こうしたリスクが現実化しやすいのです。

空き家管理サービスとは何か——内容と費用

遠方の実家を守る最も現実的な手段が、空き家管理サービスの活用です。空き家管理サービスとは、所有者に代わって専門業者が空き家を定期的に巡回・点検・管理するサービスです。専門会社・不動産会社・ハウスメーカー・警備会社など、さまざまな事業者が提供しています。

基本的なサービス内容

空き家管理サービスの基本プランには、一般的に以下の内容が含まれます。建物外観の点検(屋根・外壁・雨どいの破損や異常の確認)、室内の換気(窓を開けて空気を入れ替えカビを防ぐ)、通水(蛇口を開けて排水管の乾燥・悪臭を防ぐ)、簡易清掃(掃き掃除など)、郵便物の整理・転送、そして管理状況を写真付きで報告する管理レポートの提出です。これらを月1回程度の頻度で実施するのが基本的なプランです。

費用の相場

空き家管理サービスの費用は、サービス内容・物件の広さ・立地・訪問頻度によって異なりますが、月額の相場は以下のとおりです。月1回の巡回・換気・通水・簡易清掃・郵便物整理・管理レポートを含む基本プランで月額5,000〜10,000円程度が一般的です。これに加えて、庭木の剪定・草刈り・建物外部の高圧洗浄・強化されたセキュリティ対策などを含む充実プランでは月額10,000〜15,000円程度、またはそれ以上になります。

草刈り・庭木の剪定・雪下ろし・ゴミ処分などは、基本プランに含まれず季節ごとのオプション料金として別途請求されることが多いため、契約時に何が基本に含まれ何がオプションかを確認することが重要です。年間契約では3万〜12万円程度が目安となります。

「自分で通うコスト」との比較

「管理サービスにお金を払うのはもったいない」と感じる方もいますが、自分で実家に通うコストと比較することが重要です。たとえば実家への往復交通費が3万円かかる場合、年4回通えば12万円になります。一方、月1回訪問してくれる管理サービスは年間6万〜8万円程度です。交通費に加えて移動にかかる時間・労力を考えれば、管理サービスを利用したほうがトータルで経済的かつ効率的なケースが多くあります。さらに、管理サービスは月1回の点検により問題を早期発見できるため、自分が年数回通うよりも建物の状態を良好に保ちやすいというメリットもあります。

空き家管理サービスを選ぶときのポイント

空き家管理サービスを選ぶ際は、いくつかの観点で比較検討することが重要です。まずサービス内容と料金の明確さを確認します。基本プランに何が含まれ、何がオプションになるのかが明確に示されている業者を選びましょう。「基本料金は安いが、必要な作業がすべてオプションで結局高額になった」というケースを避けるためです。

次に報告内容の充実度です。管理のたびに写真付きの詳細なレポートを提出してくれる業者であれば、遠方にいても建物の状態を正確に把握できます。クラウドで管理履歴を確認できるサービスもあり、過去の状態と比較しやすくなっています。

物件所在地に拠点がある(または近い)業者かも重要です。地域密着型の業者は、その地域の気候・建物事情に詳しく、緊急時の対応も迅速です。また賠償責任保険に加入しているかも確認すべき点です。管理作業中に建物や近隣に損害を与えた場合に備えて、保険に加入している業者を選ぶと安心です。

最後に柔軟なオプション対応ができるかです。物件の状況や季節に応じて、草刈りの頻度を増やす・特定の点検を追加するなど、柔軟に対応してくれる業者であれば長期的に安心して任せられます。

管理だけでは解決しない——「争続」という時限爆弾

空き家管理サービスは建物の維持には有効ですが、実家をめぐるもう一つの深刻な問題を解決するものではありません。それが、将来の相続をめぐる兄弟間の争い、いわゆる「争続」です。

遠方の実家は、相続が発生したときに兄弟間の争いの火種になりやすい財産です。「誰が実家を引き継ぐのか」「売却するのか保有するのか」「管理の手間や費用を誰が負担するのか」「実家の評価額をいくらと見るのか」——これらをめぐって、それまで仲の良かった兄弟が深刻に対立するケースは後を絶ちません。特に、不動産は預貯金のように簡単に分割できないため、相続財産に占める実家の割合が大きいほど揉めやすくなります。

さらに、実家の管理を特定の相続人(多くは実家の近くに住む人や長男・長女)が担っていた場合、「自分ばかりが負担してきた」という不満が相続時に噴出することもあります。逆に、実家を引き継ぐ人にとっては「負動産を押し付けられた」という感情が生じることもあります。管理の問題と相続の問題は、密接に絡み合っているのです。

争続を防ぐための4つの事前対策

① 家族で実家の将来について話し合う

争続を防ぐ最も効果的な対策は、親が元気なうちに家族全員で実家の将来について話し合うことです。「実家を将来どうするか(残すか・売るか・活用するか)」「誰が中心になって管理するか」「親の介護や施設入所の費用をどう分担するか」といったテーマを、感情的にならずに話し合っておくことが重要です。「縁起でもない」と先送りにするほど、いざ相続が起きたときの混乱が大きくなります。元気なうちの話し合いこそが、最高の争続対策です。

② 遺言書を作成しておく

親に遺言書を作成してもらうことは、争続防止に極めて有効です。遺言書で「実家を誰に相続させるか」を明確に指定しておけば、相続人間で分け方をめぐって争う余地が大きく減ります。特に不動産が絡む相続では、遺言書の有無が争続になるかどうかを分ける決定的な要素になります。確実性の高い公正証書遺言での作成が望ましく、遺留分(相続人が最低限受け取れる取り分)にも配慮した内容にすることが重要です。

③ 生前のうちに実家の活用・売却を進める

相続が発生してから不動産を処分しようとすると、相続人全員の合意が必要になり手続きが複雑化します。親が元気で判断能力があるうちに、実家を売却したり、賃貸・民泊などで活用したりすることで、相続時の争いの種を事前に取り除くことができます。生前売却であれば、親自身が納得のいく条件で売却でき、得た資金を生活費・介護費に充てることもできます。

④ 家族信託で「認知症リスク」に備える

親が認知症などで判断能力を失うと、実家の売却・賃貸・大規模修繕といった財産の処分ができなくなる「資産凍結」が起こります。これに備える手段が「家族信託」です。家族信託では、親が元気なうちに信頼できる子供などに財産の管理・処分の権限を委ねておくことができます。「認知症になったら実家の管理を子供に任せ、必要に応じて売却できるようにしておく」といった柔軟な設計が可能です。家族信託の組成には司法書士・弁護士などの専門家のサポートが必要ですが、認知症による資産凍結を防ぐ有力な手段として、早めの検討をおすすめします。

管理・活用・処分——最適な選択肢を見極める

遠方の実家への対応は、最終的に「管理し続ける」「活用する」「売却・処分する」のいずれかに集約されます。それぞれの判断基準を整理しておきましょう。

管理し続ける選択は、将来的に自分や家族が住む可能性がある場合、思い出のある実家を手放したくない場合、すぐに売却・活用の判断がつかない場合に適しています。ただし、保有し続ける限り固定資産税・管理費・保険料といったコストがかかり続けることを理解しておく必要があります。

活用する選択は、実家に一定の資産価値があり、賃貸・民泊・シェアスペースなどの需要が見込める場合に適しています。活用によって収益を得ながら管理状態を維持でき、保有コストを収益でカバーできる点が大きなメリットです。古民家であれば民泊・カフェなどへの転用も選択肢になります。

売却・処分する選択は、活用の見込みがなく保有コストの負担を解消したい場合に適しています。相続前に売却することで争続を防げるほか、空き家の3,000万円控除・低未利用土地の100万円控除といった税制特例を活用できる可能性もあります。

まとめ:遠方の実家は「管理」と「相続対策」の両輪で守る

遠方の実家を守るためには、「建物の管理」と「相続対策」という2つの視点が欠かせません。空き家管理サービスを活用すれば、遠方にいても建物の劣化を防ぎ、特定空家・管理不全空家への指定リスクを回避できます。月額5,000〜15,000円程度のコストは、自分で通う交通費や、管理不全による税負担増・近隣賠償リスクと比較すれば、十分に合理的な投資です。

同時に、将来の争続を防ぐための事前対策も忘れてはいけません。家族での話し合い・遺言書の作成・生前の活用や売却・家族信託といった対策を、親が元気なうちに進めておくことが、家族の絆を守りながら実家の問題を解決する最善の道です。


※本記事は情報提供を目的としており、法的アドバイスを提供するものではありません。費用・サービス内容は業者や物件の状況によって異なります。相続対策・家族信託については行政書士・司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。法令の内容は変更される場合があります。