民泊・簡易宿所と用途変更の確認申請について

民泊や貸別荘業の物件探しの際に確認すべき事項はたくさんあります。大半の人が特段気にかけない一方で意外と重要な項目が建物の用途です。

民泊や貸別荘用の物件探しの際は、中古住宅を中心に探す方が多いかと思いますが、こうした物件の用途は通常「住宅」です。

しかし、旅館業法の簡易宿所許可を取得するためには、旅館業用途である必要があります。旅館業の申請に必要な書類やその確認方法は自治体によって異なる部分があるため一概には言えませんが、基本的に中古住宅を取得した場合には住宅」→「旅館業用途」へと用途変更が必要になるのです。

民泊や貸別荘の営業許可についてはこちらの記事を参照ください

しかし、日常的にはまず聞くことのない用語な上、建築基準法などの知識が必要になるため中々わかりにくい概念なのがこの用途変更。そこで、本記事では民泊と用途変更の関連性についてまとめました。

根拠法令:建築基準法

そもそも用途変更とは

用途変更とは建築基準法に定められたもので、建物の用途を変更(例えば住宅→旅館業用途)する際には、用途変更の確認申請という手続きを行わなければならないというものです。

確認申請…簡単に言うと、建物の新築や一定規模以上の改築の際に、設計図が建築基準法の規定を満たしているかを専門機関によって確認し、建築物の安全性を確保するための手続きです。一定の条件に該当する場合を除き、基本的にはどの建物も新築の際には行っていなければなりません。

しかし、必ずしもこの確認申請が必要になるわけではありません。用途変更の際に確認申請が必要になるのは、

①特殊建築物に用途を変更する かつ ②用途変更部分の床面積が200㎡を超える

この2つに該当する場合に確認申請が必要となります。

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
学校、体育館
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場
倉庫、自動車車庫、自動車修理工場
特殊建築物の例

簡易宿所は特殊建築物に該当する

不特定多数の人が利用する建物や大衆向けの施設が特殊建築物として定められており、簡易宿所もホテル・旅館と同様の扱いとなるので特殊建築物に該当します。よって、200㎡を超える物件の場合には用途変更の確認申請が必要になります。

逆に言えば、200㎡以下の場合には確認申請は不要となります。3LDK~4LDKの一戸建て住宅の一般的な面積は120㎡~150㎡程度になりますので、確認申請は不要、ということになるかと思います。少し大きめのお家なら必要になる可能性は十分あります。

また、ホテル→旅館のように類似の用途相互間の変更の場合にも確認申請は不要とされています。よって、住宅宿泊事業法に基づいて民泊届出を行う場合は建物の用途は住宅→住宅のまま変わらないため、中古住宅を取得したとしても用途変更は必要ないのです。

用途変更の確認申請を行う場合の流れ

確認申請が必要になった場合、建築当時の設計図書と確認済証・検査済証などの書類から現状を把握し、建築当時の建築基準法と現行法令を照らし合わせて既存不適格(建築当時は法令の基準を満たしていたが、法改正により現在の法令基準を満たさなくなってしまった部分)の有無の確認などを行います。

そして用途変更に伴って新たに適合させるべき法令・条例の構造技術上の基準を整理し、改修工事が必要な部分を確認して設計に盛り込み、確認申請、という流れになります。こう聞くと「確認申請を行うことになると大変だから、確認申請が必要ない範囲で物件を探そう」と思うかもしれません。

確認申請の詳細についてはこちらの記事を参照ください

用途変更が必要なくても建築基準法には適合させる必要あり

しかし確認申請が不要であっても、建築基準法に定められた技術基準に適合させる必要はあります

建築基準法では建物の用途に応じて適用される規定が異なるため、用途変更によってより厳しい基準が課せられる場合があります。一戸建ての住宅から簡易宿所に用途変更する場合には、新たに適用される規定が多くあり、これらの諸基準に適合させるためには改修工事が必要になることもありえます。

元々リフォーム工事を行うつもりだった場合にはついでにひと手間増えるくらいの感覚ですが、水回りだけ簡単に改修して営業したい、などと考えていた人にとっては、既存建築物の状態によっては想定以上の改修費と工期が必要になる可能性があります。なんだか余計な出費と面倒事が増えてしまうように感じてしまうかもしれません。

しかし、本来的には建築基準法の規制は建物の安全性を担保することで利用者を守るためのものです。私たちが日々安心して建物を利用できるのもこうした諸法令の規制のおかげでもあります。そして、建築物の所有者や管理者には建築物の安全に維持・保全する責任があります。

施設を営業するという事はこれらの管理責任も背負っていく、ということを改めて意識しながら、物件選定をすることも大事です。

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