
民泊や貸別荘で宿泊者を送迎するとき、送迎そのものの対価を受け取らなければ、道路運送法の許可は要りません。ガソリン代などの実費は受け取ることができ、送迎の有無で宿泊料金に差をつけることも、差額が実費の範囲内なら認められています。この記事では、国土交通省のガイドラインにもとづいてその線引きを整理し、料金を取りたい場合や車を貸す場合の手続き、送迎を始めるときの実務の注意点も解説します。
結論:送迎の「対価」を受け取らなければ許可は要らない
公共交通の便が悪い場所の民泊・貸別荘では、駅や空港との送迎が集客の条件になることがあります。施設の車(白ナンバーの自家用車)で送迎する場合、道路運送法の許可が要るかどうかは、送迎に対してお金を受け取るかどうか、受け取るならそれが「実費」の範囲かどうかで決まります。
| ケース | 道路運送法の許可・登録 | 根拠 |
| 駅・空港と施設の間を無料で送迎する(途中の買い物への立ち寄りや、社会通念上妥当な長距離も含む) | 不要 | 国交省ガイドライン Ⅱ1(2)① |
| 近くの観光地・海水浴場・イベント会場などへ無料で送迎する | 不要(社会通念上常識的な範囲) | 同上 |
| ガソリン代・高速代・駐車場代などの実費だけを受け取る | 不要 | 同 Ⅱ1(1)② |
| 送迎の有無で宿泊料金に差をつけ、差額が実費(車両の償却費などを含む)の範囲内 | 不要 | 同 Ⅱ2 |
| 送迎料を運賃として定めて受け取る、実費を超える差額をつける | 必要(自家用車では原則できない) | 道路運送法 第78条 |
| 宿泊者に施設の車を有料で貸す | レンタカーの許可が必要 | 道路運送法 第80条 |

根拠:道路運送法 第78条と、国土交通省のガイドライン
自家用自動車で人を運ぶことを有償で行うのは、道路運送法で原則として禁止されています。
自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
道路運送法 第78条(柱書)
例外は、災害で緊急を要するとき、市町村やNPO法人などが登録を受けて行う自家用有償旅客運送、国土交通大臣の許可を受けた場合に限られます(同条各号)。宿泊施設の送迎は、これらには通常あたりません。
では、何が「有償」にあたるのか。国土交通省は、通達「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和6年3月1日 国自旅第359号)で考え方を整理しています。ガイドラインでは、「有償」を「運送サービスの提供に対する反対給付として財物を収受すること」としています。
このガイドラインは2026年6月5日に一部改正されましたが、改正されたのは観光ガイドの資格に関する部分で、宿泊施設の送迎の扱いは変わっていません。

なお、ガイドラインは一般的な考え方を示したもので、最終的には個々の事案ごとに総合的に判断するとしています。判断に迷う送迎の形を考えているときは、所在地を管轄する運輸支局に確認します(国土交通省の通達一覧)。
無料送迎でできること
駅・空港・港との送迎と、途中の立ち寄り
ガイドラインは、宿泊施設の送迎を、許可や登録が要らない具体例として挙げています。
宿泊施設が、駅・空港・港等と宿泊施設との間で、無償の運送サービスを行う場合 この場合は無償の運送サービスであるから、利用者の依頼・要望に応じて、送迎途中で商店等に立ち寄ることも差し支えない。また、送迎距離が長距離に及ぶ場合であっても、利用者を対象としたサービスとして社会通念上妥当と考えられる場合は、許可又は登録は不要である。
国土交通省「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」 Ⅱ1(2)①
たとえば、チェックインの前にスーパーで食材を買いたいという宿泊者の依頼に応じて、途中で店に立ち寄るのは、無料の送迎の範囲です。
近くの観光地・施設への送迎
ホテル・旅館・農家民泊などが、近くの施設や観光スポットへ無料で送迎することも、社会通念上常識的な範囲なら許可は要りません。ガイドラインは、スキー旅館からゲレンデ、旅館から海水浴場、宿泊施設からイベント会場への送迎を例に挙げています。チェックアウトの後に、近くの観光地まで送るといった使い方もこの考え方で判断します。
謝礼はどこまで受け取れるか
社会通念上常識的な範囲の「謝礼」は、運送の対価ではないとされています。ただし、ガイドラインは、運賃表を定めてそれに従って支払わせる場合や、謝礼を強く促して実質的に運賃を求める場合は、謝礼とは認めないとしています。宿泊施設が事業として行う送迎で、謝礼を当てにした運用はしないほうが無難です。
受け取れるお金:実費の範囲
実費として受け取れるもの
無料の送迎でも、ガソリン代などの「実費」を受け取ることはできます。ガイドラインが実費としているのは次の費用で、送迎の前後の回送の分も含まれます。
| 実費にあたるもの | 注意点 |
| ガソリンなどの燃料代 | 走行距離(km)÷燃費(km/ℓ)×1ℓあたりの価格で計算。送迎が多いなら「1kmあたり○円」と決めておく概算も認められている |
| 道路通行料 | 高速道路などの料金 |
| 駐車場料金 | 駅や空港での待ち合わせの駐車料金など |
| 保険料 | 1回・1日単位の移動サービス専用の保険や、レンタカーを借りるときの一時的な補償(免責補償など)に限る。車にもともと掛けている自賠責保険・任意保険は対象外 |
| 車両の借料 | その送迎のために借りたレンタカーの代金 |
送迎の有無で宿泊料金に差をつける場合
送迎を使う宿泊者と使わない宿泊者の公平のために、送迎の有無で宿泊料金に差をつけることもできます。この場合も、差額が送迎にかかる実費の範囲内であれば、許可は要りません(ガイドライン Ⅱ2)。
さらに、その車が主に送迎のためだけに購入・維持されている場合は、実費に、車両の償却費や車検料・保険料などの維持費を含めてよいとされています。送迎専用の車を持つ施設では、差額を設定するときに、これらを含めて計算できます。
ガイドラインは、宿泊料と送迎の実費に相当する負担分を明確に分け、必要に応じて利用者に説明できるようにしておくことが望ましいとしています。差額をどう計算したか(燃料代、償却費、維持費など)を記録に残しておくと、問い合わせを受けたときに説明できます。
受け取れないお金
次のような受け取り方は、運送に対する対価とみられ、白ナンバーの車では許可なく行えません。
- 送迎料を運賃のように定めて受け取る(例:駅まで片道○円、1人○円)
- 実費を超える金額を、送迎の料金や宿泊料金の差額として受け取る
- 謝礼の名目で、実質的に運賃を求める
料金を取って送迎したいとき・車を貸したいとき
タクシー会社・バス会社に頼む
実費を超える料金で送迎サービスを提供したいなら、許可を受けた事業者(緑ナンバー)に運送を任せるのが現実的です。宿泊者がタクシー会社などに運賃を払う形にすれば、施設が許可を取る必要はありません。
一方、施設が報酬を得て、宿泊者のためにタクシーやバスの運送を手配する形にすると、旅行業法の旅行業にあたる場合があります(旅行業法 第2条第1項第3号など)。ガイドラインも、仲介の態様によっては旅行業とみなされる場合があるとしています(Ⅲ2)。手配の対価を受け取る形を考えているときは、都道府県の旅行業の担当窓口に確認します。
自分で旅客自動車運送事業の許可を取る
施設が自ら有償で送迎するには、一般旅客自動車運送事業の許可(道路運送法 第4条)を受け、事業用自動車(緑ナンバー)で運行することになります。営業所や車庫、運行管理の体制などの要件があり、窓口は地方運輸局・運輸支局です。宿泊施設の付帯サービスとして取るには負担が大きいため、まずは無料送迎か、事業者への委託を検討するのが一般的です。
宿泊者に車を貸す(レンタカー)
施設の車を宿泊者に有料で貸すことは、送迎とは別の規制を受けます。自家用自動車を業として有償で貸し渡すには、国土交通大臣の許可(いわゆるレンタカーの許可)が必要です。
自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。
道路運送法 第80条第1項
車の手配を求められたときは、近くのレンタカー会社を案内するのが無難です。
運転を外部に頼む
施設の車を、施設の負担で外部の運転者に運転してもらうことはできます。運転の報酬を施設が払い、宿泊者からは送迎の対価を受け取らない形なら、無料の送迎のままです(ガイドライン Ⅲ1)。ただし、宿泊者が実質的に運転者へ運賃を払っているとみられる形は、許可が必要になります。
送迎を始めるときに確認すること
安全運転管理者とアルコールチェック
事業で車を使う場合、乗車定員11人以上の車を1台、またはそれ以外の車を5台以上使う拠点ごとに、安全運転管理者を選任し、都道府県公安委員会に届け出る必要があります(道路交通法 第74条の3、施行規則 第9条の8)。
安全運転管理者は、運転の前後に運転者の酒気帯びの有無をアルコール検知器で確認し、その記録を1年間保存しなければなりません(道路交通法施行規則 第9条の10)。選任が義務にならない台数でも、送迎を担当するスタッフの運転前の確認の手順は決めておきます。
車の大きさと免許
乗車定員11人以上の車は、普通免許では運転できず、中型免許以上が必要です(道路交通法施行規則 第2条)。大人数の送迎に備えて大きな車を選ぶと、運転できるスタッフが限られます。送迎に使う車は、定員と、スタッフの免許の両方から選びます。
実務上は、定員8人程度のワゴン車で、料金を取らずに送迎する形がとりやすいといえます。乗車定員が10人以下なので、定員の面では中型免許の要件にかからず、安全運転管理者も、この大きさの車なら5台以上になるまでは選任の義務がありません。
保険
送迎中の事故に備え、車の任意保険で、業務での使用や同乗者への補償がどこまでカバーされるかを、保険会社に確認しておきます。前述のとおり、車にもともと掛けている任意保険の保険料は、宿泊者から受け取れる実費には入りません。
予約サイトでの見せ方
予約サイトや自社サイトで送迎を案内するときは、「無料送迎」なのか、「送迎付きプラン」として宿泊料金に差をつけるのかをはっきりさせます。送迎付きのプランにするなら、差額が実費の範囲内に収まるよう計算しておきます。
違反したときの罰則
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
| 自家用車で有償の運送をした | 1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金(併科あり) | 道路運送法 第97条第1号(第78条違反) |
| 許可を受けずに一般旅客自動車運送事業を経営した | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり) | 道路運送法 第96条第1号(第4条第1項違反) |
| 許可を受けずに自家用車を有償で貸し渡した | 100万円以下の罰金 | 道路運送法 第98条(第80条第1項違反) |
いわゆる白タク行為にあたると、宿泊施設の信用にも関わります。料金の受け取り方を決めるときは、実費の範囲かどうかを先に確認します。
実務でつまずきやすい点
実費に、車の任意保険の保険料を入れてしまう
実費として受け取れる保険料は、移動サービス専用の保険やレンタカーの一時的な補償に限られます。車にもともと掛けている任意保険は対象外です。ただし、送迎の有無で宿泊料金に差をつける場合で、送迎専用の車なら、保険料などの維持費も差額に含められます。2つの場合を混同しないようにします。
送迎料を定額で表示してしまう
「駅まで1人○円」のような表示は、運賃とみられやすくなります。料金を受け取るなら、実費として受け取るのか、宿泊料金の差額として設定するのかを決め、計算の根拠を残します。
車の貸し出しを気軽に引き受けてしまう
送迎のついでに「空いている時間は車を使ってよい」と有料で貸すと、レンタカーの許可の問題になります。貸し出しはせず、レンタカー会社を案内します。
台数が増えて、安全運転管理者の選任が必要になる
棟数が増えて送迎用の車を買い足すと、5台以上で安全運転管理者の選任が必要になります。11人乗り以上の車なら1台から必要です。車を増やすときに確認します。
よくある質問
チェックアウトの後に、観光地まで送ってもよいですか?
宿泊者を対象とした無料のサービスとして、社会通念上常識的な範囲なら、許可は要りません。ガイドラインは、宿泊施設から近くの観光スポットへの送迎を例に挙げています。
空港まで100km以上ある場合でも、無料送迎なら大丈夫ですか?
ガイドラインは、送迎の距離が長くても、利用者を対象としたサービスとして社会通念上妥当と考えられる場合は許可は不要としています。距離だけで一律に決まるものではありません。
ガソリン代はいくらまで受け取れますか?
走行距離(km)÷燃費(km/ℓ)×1ℓあたりの価格で計算した額が目安です。送迎が頻繁なら、一定期間ごとに「1kmあたり○円」と決めて概算することも認められています。
民泊新法の届出住宅でも、同じ扱いですか?
ガイドラインは「ホテル・旅館等の宿泊施設」「ホテル、旅館、農家民泊等」を例に挙げています。運送に対して対価を受け取るかどうかで判断する考え方からすると、住宅宿泊事業(民泊新法)の届出住宅の宿泊者の送迎も、同じように判断されると考えられます。迷う場合は運輸支局に確認します。
まとめ
- 自家用車での有償の運送は、道路運送法 第78条で原則禁止。送迎の対価を受け取らなければ許可は要らない
- 駅・空港との送迎、途中の買い物、近くの観光地への送迎は、無料で社会通念上妥当な範囲なら許可不要
- 燃料代・道路通行料・駐車場料金・一部の保険料・レンタカー代などの実費は受け取れる
- 送迎の有無で宿泊料金に差をつけるなら、差額は実費の範囲内に。送迎専用の車なら償却費や維持費も含められる
- 料金を取って送迎したいなら許可を受けた事業者に頼む。宿泊者に車を有料で貸すにはレンタカーの許可(第80条)が要る
- 車の台数や定員によっては、安全運転管理者の選任とアルコールチェックが必要
参考資料
- 道路運送法(e-Gov法令検索)
- 道路交通法(e-Gov法令検索)
- 道路交通法施行規則(e-Gov法令検索)
- 旅行業法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて」(令和6年3月1日 国自旅第359号、2026年6月5日一部改正)
- 同ガイドラインのイラスト版
法令・制度の情報は2026年10月時点で確認したものです。



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