民泊や貸別荘の定員は何名が適切?各都道府県の定員平均を割り出してみた

このページでわかること
・貸別荘(簡易宿所)を始めとした各施設形態の客室定員の都道府県ごとの平均値

民泊や貸別荘は、ビジネスホテルや旅館と比べて大人数で宿泊できることが魅力の1つです。

建物の床面積や間取りによって可能な宿泊最大定員も変わってくるところですが、競合施設の定員や宿泊客の需要に合わせ、最低限の定員数は確保できるようにしておきたいところです。

定員は価格設定や収支計画にも大きく関わってくるため、物件が決まったら早い段階で検討しておいた方がよいでしょう。

「でもどのくらいの定員数が適切なのか見当もつかない」という方の参考になるよう、全国の各都道府県の宿泊施設の平均の定員数を、観光庁の発表している宿泊旅行統計調査の結果から逆算して割り出してみました。

そもそも構造上の定員上限は決まっている

まず全国の平均値をしていく前に、営業許可を取得する上での制限を把握しておきましょう。

民泊や貸別荘を営業する場合、「住宅宿泊事業法」上の届出もしくは「旅館業法」上の許可を得る必要がありますが、いずれにしても居室の床面積は宿泊者一人当たり3.3 ㎡以上を確保することとされています。

つまり、5人を定員とする場合、最低16.5㎡(約10帖)の床面積が必要です。大人数の宿泊定員を設定しない限りはそこまで心配しなくても大丈夫ですが、法律上の制限があるという認識は持っておきましょう。

なお、住宅宿泊事業法における民泊の届出を行う場合、家主不在型ではなく家主居住型とする場合で「居室」に含まれる面積が若干変わってきますので、ここも注意しておきましょう。

各都道府県の1室あたりの定員は?

それでは各都道府県の宿泊定員の平均値を見ていきましょう。

今回使用したのは宿泊旅行統計調査の2023年の年間値です。ここで公表されている「延べ宿泊者数」「定員稼働率」「利用客室数」「客室稼働率」を用いて逆算することにしました。

定員稼働率

定員稼働率は、施設当たりの宿泊可能定員に対する実際の宿泊者数の割合です。以下の式で算出されます。

定員稼働率=期間あたりの宿泊者数÷期間あたりの宿泊可能定員

例えば、2人定員の部屋を5室有するホテルの宿泊可能定員は10人、1ヶ月当たりの宿泊可能定員は300人です。このホテルに1ヶ月180人のお客さんが宿泊した場合、定員稼働率は60%となります。

この式を逆算することで、宿泊可能定員を逆算します。つまり、

期間あたりの宿泊可能定員=期間あたりの宿泊者数÷定員稼働率

の式で算出が可能です。これで求めた2023年の宿泊可能定員数は以下になります。

2023年の各都道府県の宿泊可能定員数
客室稼働率

客室稼働率は、施設当たりの宿泊可能室数に対する実際の利用室数の割合です。以下の式で算出されます。

客室稼働率=期間あたりの利用客室数÷期間あたりの宿泊可能室数

例えば、2人定員の部屋を5部屋有するホテルの1ヶ月あたりの宿泊可能室数は150室。このホテルに1ヶ月120室利用された場合、客室稼働率は80%となります。

この式を逆算することで、宿泊可能室数を逆算します。つまり、

期間あたりの宿泊可能室数=期間あたりの利用客室数÷客室稼働率

の式で算出が可能です。これで求めた2023年の宿泊可能室数(つまり客室の総在庫)は以下になります。

2023年の各都道府県の宿泊可能室数
客室あたりの定員の平均値を算出

上記で求めた期間あたりの宿泊可能定員と期間あたりの宿泊可能室数を用いることで客室あたりの定員の平均を求めます。

客室あたりの定員の平均値=期間あたりの宿泊可能定員÷期間あたりの宿泊可能室数

この結果で算出した値を事項で紹介します。

1室あたりの定員の平均値

貸別荘や一棟貸しといったスタイルの宿泊施設は「簡易宿所」に分類されます。定員が5人を上回る都道府県を赤字、定員が3人を下回る都道府県を青字にしてあります。

大都市の定員は少な目、地方は多め

簡易宿所には貸別荘や一棟貸しのほか、ゲストハウスやカプセルホテルも含まれるので一概に貸別荘の施設の傾向とは言い切れませんが、東京や大阪、京都などの都市圏の客室当たりの定員平均は3人以下と少なめです。こうした地域の特徴としてカプセルホテルが多く出店していることが挙げられ、こうした施設の存在が定員数の平均を押し下げていることが推測されます。

また、都市圏はそもそも大人数を定員にできるほどの床面積を確保しづらいこと、グループ旅行よりも一人旅や恋人同士、夫婦などの利用シーンを想定した宿泊施設も多く、1室あたりの宿泊定員が他県に比べて少なめになっているということが予想されます。

一方、地方は軒並み定員数が多いです。こうした地域では「大人数で泊まれること」の需要に対する対応は当然のこととなりますが、例えば1人で現地の暮らしを体験したいというようなニッチ層へのアプローチ方法などを考えていく余地もあると思います。

参考データ

参考データ:2023年(令和5年)年間値(速報値)集計結果/宿泊旅行統計調査(観光庁)

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