【住宅宿泊事業法】民泊をやめるときの廃業届と手続きの流れ

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住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて届出をして民泊を運営してきたものの、運営をやめることにした——そんなとき、必要になるのが「廃業の届出」です。民泊を始めるときに届出が必要だったように、やめるときにも所定の届出を行う義務があります。「やめるだけだから手続きは不要だろう」と放置すると、法律上の義務を怠ることになり、行政からの指導を受ける可能性があります。

住宅宿泊事業の廃業手続きは、旅館業の廃止手続きと比べて比較的シンプルです。届出制であるため、所定の届出書を提出することで完了します。ただし、届出の期限・提出先・標識の返却・予約済みゲストへの対応など、押さえておくべきポイントがいくつかあります。

この記事では、住宅宿泊事業をやめるときの廃業届の手続きの流れと注意点を解説します。なお、具体的な様式や提出先は自治体によって運用が異なる場合があるため、必ず管轄窓口にご確認ください。

住宅宿泊事業をやめるには「廃業届」が必要

住宅宿泊事業法では、民泊の運営をやめる際に「廃業等届出書」を提出することが義務付けられています。これは、民泊を始めるときに行った「届出」と対になる手続きです。住宅宿泊事業は許可制ではなく届出制であるため、やめるときも比較的シンプルな届出で済みますが、届出自体は法律上の義務です。

廃業届が必要になるのは、単に「自分の意思で事業をやめる」場合だけではありません。住宅宿泊事業法では、以下のような場合に届出が必要とされています。住宅宿泊事業を廃止したとき(事業者本人がやめる場合)、住宅宿泊事業者である個人が死亡したとき(相続人が届出)、法人が合併により消滅したとき、法人が破産手続開始の決定により解散したとき、法人がその他の理由で解散したときなどです。それぞれのケースで届出を行う人(届出義務者)が定められています。最も一般的なのは、事業者本人が自らの意思で事業を廃止するケースです。

廃業届を提出することで、行政側の事業者登録が抹消され、正式に事業をやめたことになります。届出を怠ると、事業をやめたにもかかわらず登録が残ったままになり、定期報告の義務などが続くことになるため、確実に届出を行うことが重要です。

廃業届の提出期限と提出先

提出期限——廃止の日から30日以内

廃業等届出書は、住宅宿泊事業を廃止した日から30日以内に提出する必要があります。「やめよう」と思った時点ではなく、実際に事業を廃止した日が起算日です。期限が定められているため、事業をやめると決めたら、廃止のタイミングを明確にして、速やかに届出の準備を進めることが重要です。

提出先——届出をした都道府県・保健所設置市等

廃業届の提出先は、民泊の届出を行った都道府県、または保健所設置市・特別区などの担当窓口です。多くの自治体では、観光部局または保健所が担当しています。実際の提出は、民泊制度運営システム(民泊制度ポータルサイト)を通じてオンラインで行うのが基本です。民泊の届出自体がこのシステムを通じて行われているため、廃業の届出も同じシステムから手続きします。システムの操作方法については、各自治体や観光庁がマニュアルを公開しています。

必要な書類——廃業等届出書(第三号様式)

廃業の届出に必要な書類は、基本的に「廃業等届出書」(第三号様式)です。新規届出のときのように多数の添付書類を揃える必要はなく、廃業届出書の提出が中心となります。届出書には、届出住宅の情報・届出番号・廃止の年月日・廃止の理由などを記載します。様式は各自治体のウェブサイトや民泊制度ポータルサイトからダウンロードできます。ただし、死亡・合併・破産・解散など事業者本人の廃止以外のケースでは、それを証する書類の添付が求められる場合があります。

廃業手続きの流れ

ステップ1:廃止日の決定と予約済みゲストへの対応

まず、いつ事業を廃止するかを決めます。すでに予約が入っている場合は、廃止日との関係を整理する必要があります。廃止日以降の予約が入っている場合は、ゲストへの連絡・キャンセル対応・代替宿泊先の案内などを行います。OTA(予約サイト)の掲載も停止します。ゲストに迷惑をかけないよう、予約状況を確認した上で廃止日を設定することが望ましいです。

ステップ2:廃業等届出書の準備

廃業等届出書(第三号様式)を準備します。様式をダウンロードし、届出住宅の情報・届出番号・廃止年月日・廃止理由などを記入します。記入内容に不明な点がある場合は、管轄の窓口に問い合わせて確認します。

ステップ3:民泊制度運営システムを通じた届出

民泊制度運営システム(民泊制度ポータルサイト)にログインし、廃業の届出を行います。届出をした自治体に対して、システムを通じて廃業等届出書を提出します。廃止日から30日以内に手続きを完了させます。システムの操作方法は、観光庁や各自治体が公開しているマニュアルを参照してください。

ステップ4:標識(届出番号を記載した標識)の返却

住宅宿泊事業を行う際には、届出番号を記載した「標識」を物件の見やすい場所に掲示する義務がありました。事業を廃止する際には、この標識を返却する必要があります。標識は郵送または窓口で返却します。紛失等により返却できない場合は、廃業等届出書にその旨を記載するか、担当窓口に電話で連絡することで対応できる場合があります。自治体によって扱いが異なるため、確認しておきましょう。

ステップ5:最終の定期報告と税務処理

住宅宿泊事業者には、宿泊日数等を定期的に報告する義務があります。廃業する場合も、廃止までの期間の最終的な定期報告が必要になることがあります。また、個人事業として運営していた場合は、税務署への廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出も必要です。事業の廃止に伴う税務処理(減価償却資産の扱いなど)については、税理士に相談することをおすすめします。

廃業手続きで見落としがちな注意点

各種契約の解約を忘れずに

廃業届の提出だけでなく、民泊運営に関連する各種契約の解約も必要です。OTA(Airbnbなど)のアカウント・掲載の停止、清掃業者・リネン業者との契約解約、住宅宿泊管理業者に委託していた場合は管理委託契約の解約、火災保険など各種保険の見直しなどを行います。これらを放置すると、不要な費用が発生し続けることがあります。

賃借物件の場合は賃貸借契約の解約

賃借物件で民泊を運営していた場合は、物件の賃貸借契約の解約手続きが必要です。賃貸借契約には解約予告期間(多くは1〜数ヶ月前の予告が必要)が定められていることが多いため、早めに貸主に解約を通知することで、無駄な賃料負担を避けられます。原状回復義務がある場合は、その範囲と費用も確認しておきましょう。

標識の掲示義務は廃業まで継続

標識は事業を行っている間、掲示し続ける義務があります。廃業届を出す前に標識を外してしまうと、掲示義務違反になる可能性があるため注意が必要です。廃業の手続きと標識の返却のタイミングを適切に管理しましょう。

廃業より「事業譲渡」が有利な場合もある

そして最も重要な点として、廃業を決める前に「事業譲渡できないか」を検討することをおすすめします。稼働実績のある民泊は、廃業して何も回収しないより、事業として第三者に譲渡することで価値を回収できる可能性があります。特に黒字で好調な民泊や、立地の良い物件は、事業譲渡で初期投資の一部または相当部分を回収できることがあります。「やめる=廃業」と即断せず、事業譲渡という選択肢も含めて検討することが、損をしないための重要なポイントです。

住宅宿泊事業の廃業手続きが旅館業より簡単な理由

住宅宿泊事業の廃業手続きは、旅館業(簡易宿所など)の廃止手続きと比べると、比較的シンプルです。その理由は、住宅宿泊事業が「許可制」ではなく「届出制」だからです。

住宅宿泊事業は、開業時も届出だけで始められる制度設計になっており、廃業時も廃業等届出書の提出という届出で完了します。一方、旅館業は保健所の「許可」を得て営業する制度であり、廃止の際にも所定の廃止届を提出します。営業形態によって手続きの性質が異なるため、自分がどちらの制度で営業していたかを確認した上で、適切な手続きを行うことが重要です。旅館業(簡易宿所)の廃止・譲渡手続きについては、別の専門記事で解説しています。

なお、同じ物件で住宅宿泊事業から旅館業へ、あるいはその逆へ切り替える場合は、一方の廃止・廃業手続きと、もう一方の新規届出・許可取得を行うことになります。営業形態の変更を検討している場合も、それぞれの手続きを正確に把握しておく必要があります。

まとめ:廃業も「届出義務」、放置は禁物

住宅宿泊事業をやめるときには、廃止日から30日以内に廃業等届出書を提出する義務があります。届出制のため手続きは比較的シンプルですが、民泊制度運営システムを通じた届出・標識の返却・各種契約の解約・予約済みゲストへの対応・税務処理など、押さえるべきポイントがいくつかあります。「やめるだけだから」と手続きを放置せず、確実に届出を行うことが重要です。

そして、廃業を決める前に必ず検討していただきたいのが、「事業譲渡」という選択肢です。稼働実績のある民泊、特に黒字で立地の良い物件は、廃業して何も回収しないより、事業として譲渡することで価値を回収できる可能性があります。「やめる=廃業」と即断せず、より有利な出口がないかを検討することをおすすめします。


※本記事は情報提供を目的としており、法的・税務的アドバイスを提供するものではありません。廃業手続きの様式・提出先・運用は自治体によって異なる場合があります。具体的な手続きについては、届出をした自治体の窓口または行政書士・税理士などの専門家にご確認ください。法令・制度の内容は変更される場合があります。