低未利用土地の譲渡所得控除(100万円)を活用!賢く空き家・空き地を手放すための手続きガイド

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「親から引き継いだ空き地や古家付き土地があるが、売却したときの税金が心配で踏み切れない」——こうした悩みを持つ方に、ぜひ知っておいていただきたい税制優遇制度があります。

「低未利用土地等の長期譲渡所得の100万円特別控除」は、適切に活用されていない土地(低未利用地)を売却した際に、譲渡所得から最大100万円を控除できる制度です。地方の田舎の土地・古家付きの空き地・使われていない空き家の敷地といった「負動産」の売却を後押しするために設けられており、空き家や空き地を抱えているオーナーにとって非常に使いやすい制度です。

令和8年度(2026年度)税制改正により適用期限が2028年(令和10年)12月31日まで延長され、引き続き利用できる状態です。この記事では、制度の概要・適用要件・手続きの流れを、行政書士・宅建士の資格を持つ筆者がわかりやすく解説します。なお、税務申告については必ず税理士にご相談ください。


低未利用土地等の100万円控除とはどんな制度か

この制度の正式名称は「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」(租税特別措置法第35条の3)といいます。2020年(令和2年)度の税制改正で創設され、所有者不明土地の発生を予防し、使われていない土地の適切な活用を促進することを目的としています。

制度の骨格はシンプルです。一定の要件を満たす低未利用土地等を売却した際に、長期譲渡所得の金額から最大100万円を差し引くことができます。売却益が100万円以下であれば課税所得がゼロになるため、少額の利益しか見込めない土地の売却に特に大きな効果を発揮します。

節税効果を具体的に示すと、取得費50万円の土地を200万円で売却した場合、譲渡費用(仲介手数料など)を15万円として、本来の譲渡所得は135万円です。長期譲渡所得の税率20.315%を適用すると本来の税額は約27万円ですが、100万円の特別控除を適用すると課税対象は35万円に圧縮され、税額は約7万円になります。差額の約20万円が節税効果です。売却益が100万円以下なら税額はゼロになります。


制度の適用要件を全て確認する

① 売主の要件——個人であること

この特例を利用できるのは個人に限られます。法人が売却する場合は対象外です。また、売却相手が配偶者・直系血族・生計を一にする親族など、売主と特別な関係にある者への譲渡は対象外となります。家族間での土地の名義移転を税制上有利に行う目的での利用はできません。

② 対象となる土地の要件——「低未利用土地」であること

対象となるのは「低未利用土地等」です。低未利用土地とは、居住の用・事業の用その他の用途に利用されておらず、またはその利用の程度が周辺地域における同一用途の土地の利用程度と比べて著しく劣っている土地のことです。具体的には、誰も住んでいない空き家・長年放置された空き地・雑草が生い茂って管理されていない土地・倉庫として使われているが稼働率が低い土地などが該当します。

対象土地は都市計画区域内にある必要があります。都市計画区域外の山林・農村部の土地は対象外となる場合があるため、物件所在地の市区町村で確認が必要です。また、低未利用土地であることの確認は、売主が市区町村に申請して「低未利用土地等確認書」の交付を受けることによって証明します。

③ 売却価格の要件——500万円以下(一定の場合は800万円以下)

売却代金(土地の上にある建物等の対価を含む合計額)が一定の上限以下であることが必要です。原則として500万円以下ですが、市街化区域または非線引き都市計画区域内の用途地域設定区域にある土地については800万円以下に上限が引き上げられます。また、所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域についても800万円以下が適用されます。

この売却価格の要件は「土地のみの価格」ではなく、「土地と建物の合計額」であることに注意が必要です。古家付きの土地を更地渡しで売却する場合、解体費用は控除できますが、土地代に加えて建物の解体前の価値も含めて判定されます。500万円または800万円という上限は、地方の空き家・空き地の多くがこの範囲に収まるよう設計されており、活用が難しい「負動産」の売却を後押しする設計になっています。

④ 譲渡時期の要件——2028年12月31日まで

本特例の適用対象となる譲渡時期は、2020年(令和2年)7月1日から2028年(令和10年)12月31日までです。令和8年度(2026年度)税制改正により、当初2025年末までとされていた適用期限が2028年末まで3年間延長されました。2026年1月1日以降の譲渡についても引き続き適用できます。

⑤ 売却後の利用要件——買主が土地を利用すること

売却後にその土地が適切に利用されることが要件です。買主が土地を購入後に活用する意向があることが求められます。ただし、2023年(令和5年)1月1日以降の譲渡については、コインパーキング(時間貸し駐車場)としての利用は対象外とされました。買主がコインパーキング業者である場合は特例が適用されないため、売買交渉時に買主の利用計画を確認することが重要です。

⑥ その他の要件——他の特例との重複適用不可

この特例と同一の譲渡について、収用等の場合の特別控除・事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど、他の譲渡所得税の特例を重複して適用することはできません。どの特例を使うかは税理士と相談の上で判断することが必要です。また、同一土地を分筆して特別控除を受けた場合、翌年・翌々年に残りの部分を売却しても特例は適用できません(3年目以降は再度適用可能)。


手続きの流れ——申請から確定申告まで

ステップ1:市区町村への「低未利用土地等確認書」の申請

この特例の適用を受けるためには、まず土地の所在地を管轄する市区町村に「低未利用土地等確認書」の交付を申請する必要があります。確認書は「この土地が売却前に低未利用状態にあった」ことを市区町村が確認・証明する書類であり、確定申告の際に税務署へ提出する必須書類です。

申請に必要な書類は、低未利用土地等確認申請書・売買契約書の写し・売却前の土地の状況を示す写真・土地の登記事項証明書などが一般的です。申請書の様式は国土交通省のウェブサイトからダウンロードできます。確認書の発行まで概ね1〜2週間かかります。売買契約が成立したら速やかに申請を開始しましょう。

なお、不動産会社(宅地建物取引業者)が低未利用土地であることを確認した旨の書面がある場合は、別の様式(別記様式[1]-2)を使うことができます。売却を依頼した不動産会社に確認してみることをおすすめします。

ステップ2:売買契約時に買主の利用計画を確認する

売買契約の締結時に、買主が土地を利用する意向があることを確認しておくことが重要です。確認書の申請において買主の「譲渡後利用計画書」が必要になる場合があるため(自治体によって異なる)、売買交渉の段階から買主の利用計画について確認しておくと申請がスムーズになります。コインパーキングとしての利用は対象外となることを事前に確認しておくことも必要です。

ステップ3:確定申告書の作成と提出

売却した翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に、税務署へ確定申告書を提出します。提出が必要な書類は、確定申告書・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)・市区町村から交付を受けた低未利用土地等確認書・売買契約書の写し・取得費を証明する書類などです。

特別控除の適用は自動ではなく、確定申告で申告することによって初めて適用されます。「申告しなくても自動的に税金が減る」という誤解が多いため、注意が必要です。確定申告書の作成は税理士に依頼することを強くおすすめします。


こんな土地が対象になる——具体的なケース

この特例が実際にどのような土地の売却に活用できるかを、具体的なケースで確認しておきましょう。

まず最も活用しやすいのが、地方の空き地・古家付き土地の売却です。親から相続した田舎の土地に誰も住んでいない古家が建っており、固定資産税だけが毎年かかっている状態——この場合、500万円(一定地域では800万円)以下で売却できれば、本特例が使えます。古家の解体費用を差し引いた実質的な売却益が100万円以下であれば、課税所得はゼロになります。

次に有効なのが、空き家バンクを通じた売却との組み合わせです。自治体が運営する空き家バンクに登録して買い手を見つけ、売却する場合も本特例の対象となります。買い手が「その土地・建物を活用する意向がある」ことが要件に合致するため、空き家バンクを通じた移住者への売却との相性が特に良い特例です。

また、更地になっている空き地の売却にも活用できます。建物が解体されてしばらく活用されていない更地も低未利用土地に該当します。ただし、更地の売却価格が500万円・800万円の上限を超える場合は本特例の対象外となるため、都市部の更地では適用できないケースが多くなります。


3,000万円控除との違いと使い分け

空き家の売却に使える税制特例として、前述の「空き家の3,000万円控除」(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)も同様に重要な制度です。この2つの特例は制度の性格が異なるため、自分の状況に合ったほうを選ぶことが重要です。

3,000万円控除は、旧耐震基準(1981年5月以前)の建物がある相続した住宅に適用され、控除額が最大3,000万円と非常に大きい一方、建物を耐震改修または解体することが必要で、売却価格が1億円以下という条件があります。低未利用土地の100万円控除は建物の構造・建築年は問わず、売却価格が500万〜800万円以下という条件がありますが、管理されていない空き地・古家付き土地にも幅広く使えます。

低額・地方・複数の土地を売却する場面では100万円控除が、相続した旧耐震基準の実家1軒を売る場面では3,000万円控除が適している場合が多いといえます。両方の要件を満たす場合は重複適用できないため、どちらが節税効果が大きいかを税理士に試算してもらうことが重要です。


まとめ:「使いにくい土地」を手放す最大の税制優遇を活用する

低未利用土地の100万円控除は、地方の空き地・古家付き土地・空き家敷地など「負動産」の売却を支援するために設けられた、使いやすい税制優遇制度です。500万〜800万円以下という売却価格要件は、地方の不動産の実態に即した設計になっており、多くの空き家・空き地オーナーが活用できる可能性があります。令和8年度税制改正で2028年末まで延長されており、まだ当面の間は活用できます。

ただし、この特例は「申告することによって初めて適用される」制度です。確認書の取得・確定申告という手続きを怠ると、せっかくの節税機会を失います。土地の売却を検討している方は、まず市区町村の担当窓口に「低未利用土地に該当するか」を確認することから始めましょう。


※本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスを提供するものではありません。本特例の適用可否・税額計算については必ず税理士にご相談ください。法令・制度の内容は変更される場合がありますので、最新情報は国税庁・国土交通省・各市区町村の公式サイトでご確認ください。