【食品衛生法】食品を扱う事業、どんな内容だったら許可や届出が必要になる?

一棟貸しなどを企画する場合、食事提供を検討する方も多いと思いますが、食品提供には飲食営業許可が必要になるため、どんな物件でも等しく食事提供をできるかというと決してそうではありません。

旅館業の許可を取得するのか、民泊の届出を行うのかによってどんなことを気にしなければならないのかは変わってきますが、構造や都市計画法等の関係で飲食店の営業許可の取得が難しい場合には、飲食店営業とならない範囲で、食品の提供を行える可能性も残されています。

食品衛生法は令和3年に施行された法改正で、「届出」制度が創設されました。これにより、「許可」程の厳しい要件は必要なく、食品の提供(販売)が可能になったのです。

参考:営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報/厚生労働省

参考:HACCP/厚生労働省

どんな業種なら届出で食品を提供できるのか

届出創設後は、その食品を取り扱う際の食中毒リスク等を考慮して要許可業種を32業種とし、食品営業に関する届出が不要とされる5つの業種に該当しないものについては、届出が必要と規定されます。

具体的には以下のような業種は届出が必要とされます。

食品の冷凍又は冷蔵業(倉庫・保管業)
食肉販売業(包装食肉)
魚介類販売業(包装魚介類)
氷雪販売業
野菜の仕入販売   …など

つまり、お客さんが温めるだけの状態の冷凍品の販売や、お客さんが自分で調理することを前提に食肉や魚介を販売するような形態の営業であれば届出でよいということです。

届出には食品衛生責任者が必要

届出を行う場合、食品衛生責任者を設置する必要があります。食品衛生責任者は資格を有する必要がありますが、講習を受講することでこの資格は取得可能です。

例えば一般社団法人東京都食品衛生協会では、eラーニングでの受講も開催しており、税込12,000円で取得できますのでハードルは高くありません。

またこれ以外にHACCP(ハサップ)という衛生基準に沿った衛生管理を行うことが義務付けられています。これについては後述します。

許可も届出も必要ない場合とは

また、以下のような場合は許可も届出も不要とされています。

食品又は添加物の輸入業
食品又は添加物の貯蔵又は運搬の身をする営業
常温で長期間保存しても腐敗、変敗等食品衛生上の危害発生の恐れのない包装食品の販売
合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
器具容器包装の輸入又は販売業

例えばカップ麺やペットボトル飲料など、常温保存ができる包装食品であれば許可も届出も行わずに営業できます。

HACCPに沿った衛生管理対応を行う必要がある

HACCPはハサップと読み、「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字をとった言葉です。訳すと「危害要因分析重要管理点」という意味になります。

つまり、工程ごとの危害要因を把握・分析し、対策を立てることで、、食品の安全を確保する方法です。

これによって具体的に営業者が実施することが以下のように挙げられています。

1.「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
2.必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
3.衛生管理の実施状況を記録し、保存する
4.衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す

厚生労働省HPより

ここに挙げられている衛生管理書や手順書は各事業者団体が作成し厚生労働省の確認を得た手引書を参考にするものとされています。各事業者団体の手引書はこちらから確認することが可能です。

一棟貸しではどんな食品営業の仕方が考えられる?

次に、一棟貸しという営業形態では、許可の必要ない範囲でどのような食品提供が行えるか、具体的な営業方法を考えてみました。

①ペットボトルやカップ麺をサービスとして置いておく

まず考えられるのは、特段販売等の形ではなく、サービスという形でペットボトル飲料やカップ麺といった許可や届出の必要ない食べ物・飲み物を、あらかじめアメニティなどと同様に置いておくというものです。

ちょっとした心遣いとしてお客さんの印象アップにつながります。カップ麺は夜食や朝食として嬉しい+1品になるのではないでしょうか。

ここで気を付けたいのは、お酒は酒類販売業免許という許認可が必要になるため、無許可で置くことはできません。(無料サービスという形でもダメです)

②フロントがあるのであれば、火にかけるだけの冷凍調理品を販売する

もしフロント等を置く一棟貸しを予定しているのであれば、フロントに冷凍庫を設置し、そこで冷凍品を保管・必要に応じて販売するという形で運営する方法もあるでしょう。

火にかけるだけであれば、お客さんも特段手間にならないですし、簡単に美味しい鍋やおつまみができるのは嬉しいですよね。あらかじめHP等で告知しておけば売上アップにもつながります。

検討段階で管轄保健所への確認を

以上、食品営業について説明してきました。

ここで挙げたことは一般的な解釈であり、各自治体によって設けられた条例の規制があったり、保健所によって対応が異なることがあります。計画段階で必ず管轄の保健所へ相談を行うようにしましょう。

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