このページでわかること
・民泊や貸別荘は学校の近くに開業できないの?
・開業に規制がかかっている根拠は?
民泊や貸別荘業を開業しようとした際、学校の近くにあると開業できないという話を聞いたことはありませんか?
結論から言いますと、民泊や貸別荘をどの法律に基づいて営業許可を取得するかによって異なります。民泊や貸別荘を営業しようと思った際には3種類の営業許可があります。
この記事では、旅館業法に基づいて営業許可を取得しようとした場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて営業許可を取得しようとした場合の2パターンについてそれぞれ解説します。
旅館業法に基づいて営業許可を取得する場合(簡易宿所営業許可)
旅館業法第三条第3項では以下のように定められています。
3 第一項の許可の申請に係る施設の設置場所が、次に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合において、その設置によつて当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学を除くものとし、次項において「第一条学校」という。)及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園(以下この条において「幼保連携型認定こども園」という。)
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除くものとし、以下単に「児童福祉施設」という。)
三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第二条に規定する社会教育に関する施設その他の施設で、前二号に掲げる施設に類するものとして都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下同じ。)の条例で定めるもの
旅館業法第三条より
要するに、施設からおおむね100メートル以内に学校や児童福祉施設などの施設があるときは許可を認めない場合があるよ~といいうことです。
そのため、この条文に定められているような施設がある場合でも、絶対に許可が下りないという場合ではなく、然るべき協議や対策を行えば許可を取得できる可能性はあります。
この条文に定められている施設として、以下があります。
ー学校教育法ー
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校
ー児童福祉法ー
助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センター
ー社会教育法ー
運動施設やレクリエーション施設など(スポーツセンター、図書館、公民館など自治体による)
「おおむね100メートル」ということですが、自治体によってはこの範囲が広くなっている場合などもあります。旅館業法の取得には必ず管轄の行政部署(保健所)との事前協議が必要になります。その際に確認するとよいでしょう。
施設から100メートルの範囲内はこちらのサイトで確認すると便利です。(Google map上に指定した距離の同心円を描くことができます。)
なぜこのような定めがあるのか?
例えばラブホテル等が学校など児童施設の近隣にあると教育上よろしくないなど、反発が出てくる可能性がありますよね。設置する宿泊施設の形態によっては治安を悪化させる場合も考えられますから、公共の安全や衛生の維持の観点からこのような条文が盛り込まれていると考えられます。
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて営業許可を取得する場合
住宅宿泊事業法には旅館業法のような条文の定めはありません。ただし、住宅宿泊事業法では条例によって制限をかけることができるとされています。
(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第十八条 都道府県(第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。
つまり、自治体によっては個別に条例を制定し、その規制をもって学校の周囲にあることを理由に営業の制限をかけることができるということです。
例えば静岡県では、条例によって学校等の周囲100m以内についての営業日の規制を定めています(月曜日~金曜日の営業ができません)。自治体に個々に確認する必要があります。
参考:住宅宿泊事業(民泊サービス)の実施の制限について/静岡県
まとめ:学校が近くにあるからといって開業できない場合ではない
旅館業法で営業許可を取得する場合であっても、100メートル以内に学校があるからといって開業が不可能ということはありません。
また、住宅宿泊事業法に基づいて営業を届け出る場合、自治体の個々の運用を確認する場合があります。
いずれの場合によってもまずは管轄の自治体へ規制を確認する必要があります。開業の具体的検討を行っている物件がある場合は、事前に必ず管轄窓口へ確認するようにしましょう。
根拠法令
根拠法令:旅館業法
根拠法令:住宅宿泊事業法
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