2025年はコロナ禍からの完全回復や大阪万博もあって、国内のインバウンド旅行客の増加についてのニュースをたびたび目にするようになりました。
なかでも世間の関心も高いのは宿泊料金の値上げに関するニュースではないでしょうか。ホテル料金の値上がりは国内旅行者や出張ビジネスマンにとっても影響が大きいですよね。
一方で、宿泊業の事業者にとっては適切な価格設定に悩む時流でもあります。近頃取り上げられているニュースや円安の影響もあって「インバウンド旅行客は宿泊単価が高い」というイメージはないでしょうか。
そこで、インバウンド旅行客の宿泊単価は本当に高いのか、国や地域ごとにどのような傾向があるのか、観光庁が発表しているインバウンド消費動向調査の統計データをまとめました。
インバウンド旅行客の平均宿泊費
まずは2024年のインバウンド旅行客1人あたりの、1回の旅行で宿泊費に総額いくら使ったかのデータから見ていきましょう。

・2024年の旅行期間中の宿泊費総額はイギリス、ドイツ、オーストラリアの順に高い。
・上位は欧米豪地域で占められており、東アジア・東南アジア圏で全国籍平均を上回っているのはシンガポール・インドのみ。
・東アジア圏、特に韓国、台湾は宿泊費総額が低く、比較的短期滞在である。一方、中国は東アジア圏の中で最も高い。
日本と比べると、例えばイギリスなどは約10倍ですから、すごく高額なように感じると思います。しかしこれは旅行全期間における宿泊費の総額であることに注意しなければなりません。つまり、滞在期間が長ければ長いほど泊数も増えますから、長期滞在になるにつれこの金額が高くなるのは必然です。
インバウンド旅行客の1泊あたりの平均宿泊費
では上記の金額を、各国籍ごとの平均滞在日数で割ることで1泊あたりの平均宿泊費を見てみましょう。

最も単価の高いイギリスですら1泊あたりの平均宿泊費が12,135円であるところを見ると、「思ったよりも高くない」という印象を受けるのではないでしょうか。
・宿泊費単価が最も高いのはイギリスで、米国、シンガポール、オーストラリアと続く。
・宿泊費単価が1万円を超えているのは上記に加えカナダ、香港、イタリアであった。
・旅行全期間の宿泊費と比較したときに、宿泊費単価が高くなっている国は香港、台湾である。
・東南アジア圏の地域は、シンガポールを除いて軒並み宿泊費単価も低い傾向にある。
・最も宿泊費単価が低いのはベトナムで、フィリピン、インドネシアと続く。
まとめ:現状を把握して適切な価格設定を
最近は「インバウンドにより宿泊費が高騰している」というニュースをよく見かけるため、インバウンド向けなら一般的な国内旅行者の感覚値の2倍・3倍もの料金が取れると思っている方も多いと思います。
しかし、こうして統計データを読み解いてみると、インバウンド旅行客が1泊当たりの宿泊費に消費している金額はそこまで高額ではありません。全国籍平均で日本の平均消費額の約1.1倍、1泊当たりの宿泊単価が最も高いイギリスでも約1.6倍です。
一部の地域や施設の情報だけ切り取られたニュースを鵜呑みにして周辺施設の価格や自施設と同水準施設の価格を調べずにいると、相場から乖離した価格設定となりかねません。また、宿泊価格をあげることはそれだけ予約客のサービスや清潔さに対する期待値があがることになります。
価格設定の際には、こうした統計情報はもとい競合施設の価格や自施設の市場水準を適切に見極めて値付けすることが求められるでしょう。
使用データ:インバウンド消費動向調査/2024年1月~12月分
コメント