民泊や貸別荘のインバウンド需要は?旅行統計から見るインバウンド予約が取れる地域・取れない地域

このページでわかること
・民泊や貸別荘のインバウンド需要の地域ごとの違い
・日本人と外国人の宿泊単価の違い

民泊や貸別荘と言った一棟貸しを計画する際、ターゲット層を決める際の大きな分かれ目となるのがインバウンド需要を狙うのか狙わないのか。巷では「インバウン丼」なるものが注目を浴びたように、価格設定、ひいては収益にも大きく関わってくる重要要素となります。

そこで、民泊や貸別荘にインバウンドの需要はあるのか、地域ごとの違いや、インバウンドを狙うか狙わないかで宿泊価格の設定にどれくらいの影響が出てくるのかをまとめたいと思います。

宿泊業界全体のインバウンド率

まずは宿泊業界全体の動向を見てみましょう。

2023年の宿泊旅行統計調査から、全体の宿泊者数に占める外国人の宿泊者数の割合は都道府県別に以下のようになっています。

2023年の都道府県別インバウンド率(宿泊業態別)

ご覧いただければ一目でわかるように、インバウンドが占める宿泊者割合には明確な地域差があります。

東京京都大阪といったの世界的にも名の知れた大都市には多くの外国人が宿泊しています。一方、地方のインバウンド率は目に見えて低いです。

宿泊業態別でも都道府県ごとの傾向は変わって異なりますが、貸別荘や一棟貸しといった業態が含まれる宿泊業態である「簡易宿所」については、京都のインバウンド率が48.3%と実に約半数が外国人という驚異的な数値となっています。

一方で、例えば関東地方に視点を絞ると、東京の簡易宿所のインバウンド率は41.0%と高い数値であるのに対し、埼玉千葉神奈川2%~3%と軒並み低い数値であることがわかります。

民泊のインバウンド率

では、民泊のインバウンド率はどうでしょうか。

関東近郊の10都道府県に的を絞って、直近1年間のインバウンド率の推移を見てみましょう。

まず、ホテルや旅館、簡易宿所と同様に東京は高いインバウンド率を維持しています。割合でみると60%超となっており、東京の民泊の外国人旅行者の宿泊需要は明白です。

次いで山梨神奈川30%~40%と続きます。山梨については前項の表からもわかるように、ホテルや旅館、簡易宿所と言った各業態でも全国平均並み以上のインバウンド率となっており、世界遺産である富士山の外国人需要の高さが窺えます。

一方で、同じく富士山を有する静岡のインバウンド率は、民泊でも前項の各宿泊業態においても低い割合となっています。東京からのアクセスの良し悪しや富士山以外のレジャー観光の魅力等が山梨と静岡のインバウンド率の差に表れているものと推測できます。

簡易宿所のインバウンド率では軒並み低い割合だった埼玉千葉神奈川などの東京周辺の県においては、民泊のインバウンド率が20%~40%と比較的高い割合となっています。民泊という宿泊スタイルの特徴として、一般的には貸別荘など簡易宿所施設よりも安価で大人数で宿泊できることが挙げられます。東京観光の宿泊拠点として周辺県の民泊が選ばれているという可能性が考えられるでしょう。

インバウンドを狙うなら大都市圏

以上より、インバウンドをメインターゲットにした民泊や貸別荘を企画する場合は、東京・大阪・京都などの大都市圏に所在していることが必要だと言えるでしょう。

また、メインターゲットとは言わずとも、年間を通じて単価を上げるためにも外国人客を狙っていきたいという場合には、世界的にも人気な観光スポット等の近辺であることは必須です。

例えば、googleで「japan sightseeing ranking」で検索してみます。トップに表示されたページには、以下のランキングが掲載されています。

1.伏見稲荷神社(京都)
2.広島平和記念資料館(広島)
3.厳島神社(広島)
4.金閣寺(京都)
5.東大寺(奈良)
6.高野山 奥の院(和歌山)
7.清水寺(京都)
8.新宿御苑(東京)
9.彫刻の森美術館(神奈川)
10.成田山新勝寺(千葉)

前項で紹介したインバウンド率でも、和歌山や広島は大都市圏外の都道府県にも関わらず高めの割合になっています。こうした海外のおすすめ観光スポットの紹介サイトなども参考にするとよいでしょう。

インバウンドをターゲットにすると宿泊価格はどれくらい上がる?

ではインバウンドをターゲットにした場合、収益にはどれくらいの影響が出るでしょうか。

訪日外国人消費動向調査(観光庁)の「2024年1~3月期」の結果によると、外国人(全国籍)の宿泊費にかける金額は、1泊1名あたり、64,754円でした。

一方、同じく観光庁の日本国内の旅行消費動向調査では、2023年のデータで日本人が宿泊費にかける金額は1泊1名あたり20,138円と、なんとその差は3倍以上です。

つまり、外国人をメインターゲットにした施設を開業した場合、宿泊費は3倍の設定にしても外国人の宿泊平均単価に見合うということになります。単純に単価で計算すると、日本人のみが宿泊する施設が3日間営業しないと稼げない金額を、外国人をターゲットにした施設であれば1日で稼げるというわけですから、効率的に利益を上げていくためにもインバウンドは検討の余地があるというわけです。

外国人はどんな視点で宿泊地を選んでいるか、という視点も必要

以上、民泊や貸別荘のインバウンド需要の現状を見てきました。

今回は各都道府県のデータ値で見てきましたが、実際に物件を選定する際には観光スポットの近さや、公共交通機関のアクセス利便性、周辺の飲食店やコンビニ等の生活利便性等様々な要因が集客に絡んできます。外国人客をターゲットにした貸別荘を企画する際は。実際に自分が海外旅行をするときなどを想像しながら、旅行者の視点をもって計画していくのが有効でしょう。

参考データ

参考データ:住宅宿泊事業の宿泊実績(2023年2月-3月~2023年12月-1月分)/民泊制度ポータルサイト

参考データ:2023年(令和5年)年間値(速報値)集計結果/観光庁

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