
自分の土地の木でも、その土地が都道府県の地域森林計画の対象になっている森林(いわゆる5条森林)なら、伐採の前に市町村へ届け出る必要があります(森林法 第10条の8)。この記事では、対象かどうかの調べ方、届出が不要な場合、届け出る時期と書類を整理し、民泊・貸別荘の用地を買う・造成するときに必要な手続きもあわせて解説します。
結論:届出が要るかは「どの区域の木か」で決まる
森林法の手続きは、木の本数や土地の持ち主ではなく、その木がどの区域にあるかで決まります。自分の土地であっても、地域森林計画の対象の森林に入っていれば届出が必要です。
| 木がある場所 | 伐採の手続き | 窓口 | 根拠 |
| 地域森林計画の対象の民有林(5条森林) | 伐採を始める日の90日前から30日前までに伐採届 | 市町村 | 森林法 第10条の8 |
| 保安林 | 伐採の許可(択伐・間伐などは届出) | 都道府県 | 森林法 第34条ほか |
| 計画の対象外の森林、主に住宅地や農地として使っている土地の木 | 森林法の届出は不要 | ― | 森林法 第2条第1項・第10条の8 |
| 森林を造成してほかの用途に使う | 1haを超えると林地開発の許可(千葉県は0.3ha以上1ha以下で届出) | 都道府県(千葉県は林業事務所) | 森林法 第10条の2、千葉県の条例 第18条 |
森林法の届出が要らない場所でも、ほかの法令や条例で木の伐採が制限されている場合があります。建物の新築や造成を伴うときは、市町村の担当部署にあわせて確認します。

5条森林とは
5条森林とは、都道府県知事が立てる「地域森林計画」の対象になっている民有林のことです。地域森林計画が森林法 第5条にもとづいて立てられるため、通称で5条森林と呼ばれています。
都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、その森林計画区に係る民有林(その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺の地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。)につき、五年ごとに、その計画をたてる年の翌年四月一日以降十年を一期とする地域森林計画をたてなければならない。
森林法 第5条第1項
この計画の対象になっている民有林の立木を伐採するときは、あらかじめ市町村長に届出書を出すことが義務づけられています。
森林所有者等(略)は、地域森林計画の対象となつている民有林(第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林及び第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内の森林を除く。)の立木を伐採するには、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、市町村の長に森林の所在場所、伐採面積、伐採方法、伐採齢、伐採後の造林の方法、期間及び樹種その他農林水産省令で定める事項を記載した伐採及び伐採後の造林の届出書を提出しなければならない。
森林法 第10条の8第1項
登記の地目では判断できない
対象の森林かどうかは、登記の地目が「山林」かどうかでは決まりません。地目が宅地や原野でも計画の対象に入っていることがあり、逆に地目が山林でも対象外のことがあります。千葉県も、地目や地番では判断できないと案内しています(千葉県「伐採及び伐採後の造林届出制度」)。
庭木は原則として対象外
森林法の「森林」からは、主として農地や住宅地として使われている土地と、その上の木竹が除かれています(森林法 第2条第1項ただし書)。住宅の敷地として使っている庭の木は、原則として伐採届の対象になりません。
ただし、山林付きの物件のように、敷地の一部が計画の対象の森林に入っていることがあります。建物のまわりだけを住宅地として使い、裏手は森林のまま、という土地では、切りたい木がどちらにあるかを地図で確かめます。
対象の森林かどうかの調べ方
対象かどうかは、都道府県が公開している森林の地図で確認し、迷うときは窓口で確定させます。
千葉県:ちば情報マップで確認する
千葉県では、ちば情報マップの森林の地図で確認できます。外枠が青色の線(林班界)、枠内が赤色の横線(準林班界)で囲まれた区域が、届出の対象です。背景の色は関係ありません。
地図の最大の縮尺は5千分の1なので、交差点や建物の角を目印にして、手元の測量図や公図と重ねて判断します。境界付近で判断がつかないときは、その市町村を担当する県の林業事務所に確認します(千葉県「伐採及び伐採後の造林届出制度」)。

ほかの都道府県
多くの都道府県が、同じように森林の地図をインターネットで公開しています。見当たらないときは、市町村の林務の担当部署か、都道府県の林業事務所に問い合わせます。
届出の対象の森林には「森林簿」が作られていて、伐採のときに必要になる許認可も整理されています(林野庁「伐採造林届の添付書類について」)。手元に情報がないときは、都道府県や市町村の林務の担当部署で確認できます。
保安林かどうかも一緒に確認する
保安林に指定されている森林では、伐採届ではなく、原則として都道府県知事の許可が必要です(森林法 第34条第1項)。保安林では土地の形を変える行為にも許可が要るため(同条第2項)、建物や駐車場を作る計画があるなら、最初に確認しておきます。
届出が必要な場合と、不要な場合
面積の下限はなく、1本でも届出が要る
森林法 第10条の8第1項には、伐採の面積や本数の下限がありません。対象の森林の立木であれば、1本だけの伐採でも原則として届出が必要です。
届出が不要な主な場合
一方で、法律と省令には届出が要らない場合が定められています。民泊・貸別荘の用地で関係しそうなものは次のとおりです。
| 届出が不要な場合 | 根拠 |
| 除伐(育てる木の生育を妨げる木を取り除く作業) | 森林法 第10条の8第1項第10号 |
| 倒木、枯死木、著しく損傷した立木の伐採 | 森林法施行規則 第14条第4号 |
| 林地開発の許可を受けて、その開発のために伐採する | 森林法 第10条の8第1項第2号 |
| 認定を受けた森林経営計画に定めた伐採 | 森林法 第10条の8第1項第4号 |
| 火災・風水害などの非常災害で、緊急に伐採する | 森林法 第10条の8第1項第9号(伐採が終わった日から30日以内に届出が必要。同条第3項、施行規則 第15条) |
災害時の緊急の伐採は、事前の届出が要らないだけで、事後の届出は必要です。
2026年4月から:ごく小規模な危険木・支障木は届出不要に
2026年4月1日から、住宅や道路に危険を及ぼす木のうち、ごく小規模な伐採は届出が要らなくなりました(森林法施行規則 第14条第5号)。林野庁の案内では、次の4つをすべて満たす伐採が対象です(林野庁「危険木・支障木の伐採造林届不要(チラシ)」)。
- 道路や住宅などに、直接、危険や支障となる立木である
- 自分が所有する立木か、所有者から伐採の同意を得た立木である
- 道路や住宅などから25mの範囲内にある
- 一か所の伐採面積が50㎡未満(例:7m×7m)か、10本未満である
伐採する箇所どうしの距離が20m未満なら、まとめて一か所と数えます。伐採してから1年以内に、20m未満の範囲で追加して伐採する場合も同じです。合わせて50㎡以上になれば、届出が必要です。
条件に当てはまらないまま伐採すると、無届の伐採になります。林野庁は、伐採の前と後の様子や、木と建物との位置関係がわかる写真を撮っておくよう勧めています。判断に迷うときは、伐採の前に市町村の林務の担当部署に相談します。

伐採届の手続き:いつ・誰が・どこへ・何を出すか
伐採届は、伐採の前の届出と、伐採後・造林後の報告がセットになっています。提出先は、いずれも森林がある市町村です。
| 書類 | 出す時期 | 根拠 |
| 伐採及び伐採後の造林の届出書 | 伐採を始める日の90日前から30日前まで | 森林法施行規則 第9条第1項 |
| 伐採に係る森林の状況報告書 | 伐採が終わった日から30日以内 | 同 第14条の2 |
| 伐採後の造林に係る森林の状況報告書 | 造林が終わった日から30日以内 | 同 第14条の2 |
千葉県の案内では、間伐の場合は伐採の状況報告が、伐採の後に森林以外の用途に転用する場合は造林の状況報告が、それぞれ不要とされています(千葉県「伐採及び伐採後の造林届出制度」)。様式は林野庁のページに掲載されていますが、市町村が独自の様式や書類を定めていることもあるため、提出先の市町村で確認します。
誰が出すか
届け出るのは「森林所有者等」です。森林の所有者のほか、立木を買った人や、伐採を請け負った人なども含まれます。伐採する人と、伐採後に造林する人が違う場合は、共同で届け出ます(森林法施行規則 第9条第2項)。
届出書に書くこと
森林の所在場所、伐採面積、伐採の方法・期間・樹種、集材の方法、伐採後の造林の方法・期間・樹種などを書きます(森林法 第10条の8第1項、施行規則 第8条)。
伐採した跡地を森林以外の用途に使う場合は、その用途も書きます(施行規則 第8条第8号)。宿泊施設の敷地や駐車場にする予定なら、ここに記載することになります。
添付書類(2023年4月から義務化)
2023年4月1日から、届出書への書類の添付が義務になりました(森林法施行規則 第9条第3項)。林野庁の案内をもとに整理すると、次のとおりです(林野庁「伐採造林届の添付書類について」)。
| 添付書類 | 内容 |
| 森林の位置図・区域図 | 届け出る森林の位置と伐採区域がわかる図面。実測でなくてよい |
| 届出者の確認書類 | 個人は運転免許証・住民票などの写し、法人は登記事項証明書などの写し |
| ほかの許認可の書類 | 伐採にほかの法令の許認可が要る場合、その申請状況がわかる書類(許可後なら許可書の写し) |
| 土地の登記事項証明書など | 固定資産税の納税通知書の写しでもよい |
| 伐採の権原を示す書類 | 届出者が土地の所有者でない場合。立木の売買契約書など |
| 隣接する森林との境界確認の書類 | 隣の森林の所有者と境界を確認した状況がわかる書類。境界に接していない場合、境界杭などで境界が明らかな場合などは省略できる |
| 市町村が必要と認める書類 | 市町村ごとに定めるもの |
届け出たあと
届け出た伐採や造林の計画が、市町村の森林整備計画に合わないときは、市町村長から計画を変えるよう命じられることがあります(森林法 第10条の9第1項)。届出の内容どおりに伐採や造林をしていない場合も、計画に従うよう命じられることがあります(同条第3項)。
民泊・貸別荘の用地で押さえておきたい森林法の手続き
山林付きの物件を買う、敷地を広げるために森林を切り開く、といった場面では、伐採届のほかにも森林法の手続きがかかります。物件を決める段階で、次の3点を確認しておきます。
森林を含む土地を買ったら、90日以内に所有者の届出
地域森林計画の対象の森林の土地を新たに取得した人は、面積にかかわらず、所有者になった日から90日以内に市町村長へ届け出る必要があります(森林法 第10条の7の2第1項、施行規則 第7条)。売買のほか、相続や贈与、法人の合併で取得した場合も対象です。
添付するのは、土地の位置を示す地図と、登記事項証明書や売買契約書の写しなど、取得したことがわかる書類です。国土利用計画法の土地売買等の届出をした場合は、この届出は要りません。届出をしなかったり、うその届出をしたりすると、10万円以下の過料の対象です(森林法 第213条)(千葉県「森林の土地の新たな所有者の届出制度」)。
伐採届とは別の手続きなので、木を切る予定がなくても必要です。物件を買うときは、敷地の一部が対象の森林に入っていないかを確認しておきます。
造成するなら林地開発の許可・届出
対象の森林で、土地の形を変える開発(造成、土石の採掘、開墾など)をする場合、その面積が1haを超えると都道府県知事の許可が必要です(森林法 第10条の2第1項、施行令 第2条の3。太陽光発電設備の設置が目的なら0.5ha超)。
千葉県では、許可が要らない0.3ha以上1ha以下の開発でも、着手する日の90日前から30日前までに知事への届出が必要です(千葉県林地開発行為等の適正化に関する条例 第18条)。窓口は県の林業事務所で、新たに林地開発をする場合は、事前協議書の提出も求められています(千葉県「林地開発制度」)。
林地開発の許可を受けた開発のために伐採する場合は、伐採届は要りません(森林法 第10条の8第1項第2号)。なお、2026年4月1日施行の改正で、許可に付けられた条件(擁壁や排水施設の設置など)に違反して開発した場合にも、罰則が設けられました(森林法 第206条第2号)。
伐採届は「木を切る」ための手続きにすぎない
伐採届を出しても、その土地に宿泊施設を建てられるとは限りません。建物を建てる、造成する、建物の用途を変えるといった場合は、都市計画法の開発許可、盛土などの規制、建築基準法の手続きが別にかかり、窓口もそれぞれ違います。
特に市街化調整区域では、建物の建築や用途の変更そのものが厳しく制限されています。森林法の手続きより先に、営業できる土地かどうかを確認します。
工程の面では、伐採届は伐採を始める日の30日前までに出す必要があります。工事の着手日から逆算して、少なくとも1か月以上前には届け出られるよう準備します。林地開発の許可や千葉県の届出が必要な場合は、事前協議を含めて、さらに早くから動く必要があります。
届け出ずに伐採したときの罰則
森林法の手続きを怠った場合の罰則は、次のとおりです。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
| 伐採届を出さずに伐採した | 100万円以下の罰金 | 森林法 第208条第1号 |
| 伐採・造林の状況報告をしない、うその報告をした | 30万円以下の罰金 | 森林法 第210条第1号 |
| 森林の土地の所有者の届出をしない、うその届出をした | 10万円以下の過料 | 森林法 第213条 |
| 保安林で、許可を受けずに伐採した | 150万円以下の罰金 | 森林法 第207条第1号 |
| 許可を受けずに林地開発をした | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 森林法 第206条第1号 |
届け出ずに伐採して、土砂の流出などの災害のおそれがある場合は、市町村長から伐採の中止や、跡地に木を植えるよう命じられることがあります(森林法 第10条の9第4項)。会社の従業員などが業務として違反した場合は、本人のほかに会社も罰金の対象になります(森林法 第212条)。
なお、他人の木を無断で切った、切られたという問題は、森林法の届出とは別に、損害賠償などの民事の問題や、器物損壊罪の問題になり得ます。個別の対応は弁護士に相談してください。
実務でつまずきやすい点
地目で判断してしまう
登記の地目が宅地だから届出は要らない、とは言えません。対象の森林かどうかは、都道府県の森林の地図か窓口で確認します。
「1本だけ」「危険な木だから」で届け出ない
伐採届に面積の下限はありません。2026年4月からの危険木・支障木の扱いも、25m以内、50㎡未満または10本未満など、4つの条件をすべて満たす場合に限られます。
隣の土地との境界があいまいなまま伐採する
境界がはっきりしないまま伐採すると、隣の土地の木まで切ってしまうおそれがあります。添付書類として境界確認の状況を示す書類が求められるのも、そのためです。
工事の直前に気づく
伐採届は、伐採を始める日の30日前までに出す必要があります。造成や外構の工事の直前に、敷地の一部が対象の森林だと気づくと、工程が遅れます。
土地を買ったあとの所有者届出を忘れる
所有者の届出は、木を切るかどうかに関係なく、取得から90日以内に必要です。伐採届と混同しないようにします。
よくある質問
庭の木を切るのにも届出は要りますか?
主として住宅地として使われている土地の木は、森林法の「森林」から除かれるため、原則として届出は要りません(森林法 第2条第1項ただし書)。ただし、敷地の一部が対象の森林に入っていることもあるので、地図で確認します。
届出から伐採まで、どのくらい空ける必要がありますか?
伐採を始める日の90日前から30日前までに届け出ます(森林法施行規則 第9条第1項)。30日を切ってからでは届出の期間に間に合わないため、工程に余裕をもたせます。
伐採したあと、必ず木を植え直さないといけませんか?
届出書には伐採後の造林の計画を書きます。跡地を森林以外の用途に使う場合は、その用途を書きます。千葉県の案内では、森林以外に転用する場合、造林の状況報告は不要とされています。
木を切る業者に頼めば、届出もしてもらえますか?
伐採を請け負った人も「森林所有者等」に含まれるため、業者が届け出ることもあります。伐採する人と造林する人が違う場合は共同で届け出る必要があるので、誰が出すのかを契約の段階で決めておきます。
まとめ
- 自分の土地の木でも、地域森林計画の対象の森林(5条森林)なら、伐採を始める日の90日前から30日前までに市町村へ伐採届が必要。1本でも対象
- 対象かどうかは地目では決まらない。都道府県の森林の地図(千葉県はちば情報マップ)や窓口で確認する
- 2026年4月から、住宅や道路から25m以内で、50㎡未満または10本未満などの条件をすべて満たす危険木・支障木の伐採は届出不要
- 2023年4月から添付書類が義務。伐採の跡地を宿泊施設などに使うなら、その用途も届出書に書く
- 森林を含む土地を買ったら90日以内に所有者の届出。造成するなら林地開発の許可(千葉県は0.3ha以上で届出)も確認する
参考資料
- 森林法(e-Gov法令検索)
- 森林法施行令(e-Gov法令検索)
- 森林法施行規則(e-Gov法令検索)
- 林野庁「伐採および伐採後の造林の届出等の制度」
- 林野庁「伐採造林届の添付書類について」
- 林野庁「危険木・支障木の伐採造林届不要(チラシ)」
- 千葉県「伐採及び伐採後の造林届出制度」
- 千葉県「森林の土地の新たな所有者の届出制度」
- 千葉県「林地開発制度」
法令・制度の情報は2026年10月時点で確認したものです。



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