【民泊新法】住宅宿泊管理業者とは?絶対依頼しなければならないの?

川崎行政書士
川崎行政書士

このページでは、住宅宿泊管理業者はどんな場合に依頼しなければならないのか?住宅宿泊管理業者は具体的に何をしてくれるのか?を解説していきます。

住宅宿泊事業として民泊を営業する場合、一定の場合には住宅宿泊管理業者への依頼をしなければなりません。

具体的には、施設での常駐が難しい場合や、施設が一定規模以上の場合、法人で営む場合などに住宅宿泊事業者への依頼が必須となります。

住宅宿泊管理業者に委託しなければならない場合とは?

住宅宿泊管理業者について、住宅宿泊事業法の第十一条では以下のように定められています。

第十一条 住宅宿泊事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を一の住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。ただし、住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者である場合において、当該住宅宿泊事業者が自ら当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を行うときは、この限りでない。

住宅宿泊事業法 第十一条より

要するに、民泊として届出を行う住宅の構造や民泊の運営方法によっては、住宅宿泊管理業者に委託しなければならないということが書かれています。

では、どのような場合に委託しなければならないかというと、第十一条の続きに定められています。


 届出住宅の居室の数が、一の住宅宿泊事業者が各居室に係る住宅宿泊管理業務の全部を行ったとしてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める居室の数を超えるとき。
 届出住宅に人を宿泊させる間、不在(一時的なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものを除く。)となるとき(住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅との距離その他の事情を勘案し、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる場合として国土交通省令・厚生労働省令で定めるときを除く。)。

住宅宿泊事業法 第十一条より

要するに

…届出する住宅の居室の数がある一定の数を超えるとき
…民泊に人を宿泊させる間に一定時間以上不在となるとき

この部屋の数や不在となる時間の一定に関して、具体的にどれくらいかということは、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)に定められています。

「届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が五」を超える場合は、少なくとも超過分は住宅宿泊管理業者への委託の必要がある。なお、居室とは、届出住宅のうち、宿泊者が占有する部分のことをいい、そのうち、宿泊グループがそれぞれ独立して使い得る部屋の数が、居室の数になる。

住宅宿泊事業法施行要領 ⑺ 住宅宿泊管理業務の委託(法第 11 条第1項関係)
① 委託について より

「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間」とは、届出住宅が所在する地域の事情等を勘案する必要があるため、一概に定めることは適当ではないが、原則1時間とする。ただし、生活必需品を購入するための最寄り店舗の位置や交通手段の状況等により当該行為が長時間にわたることが想定される場合には、2時間程度までの範囲とする。

住宅宿泊事業法施行要領 ⑺ 住宅宿泊管理業務の委託(法第 11 条第1項関係)
③ 一時的な不在に関する考え方について より

要するに

居室の数が「5」を超える場合
②民泊にお客さんを泊めている間、原則1時間(2時間まで許容)以上不在になる場合

いずれかに該当する場合には、住宅宿泊管理業者に管理業務を委託しなければなりません。

居室とはリビングや寝室など、お客さんが使う部屋のことで、キッチンやトイレ、お風呂や玄関は含みません。

住宅宿泊管理業者とは?

住宅宿泊管理業者とは、登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者とされています。

第二十二条 住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。

住宅宿泊管理業第二十二条より

つまり、住宅宿泊管理業者は一般的な不動産の管理業者などとは異なり、住宅宿泊事業法に基づいた登録を受けた管理業者のことを指します。

この業者の一覧は国土交通省のホームページで公表されています。

参考:住宅宿泊管理業者登録簿

委託する管理業務の内容は?

では、この管理業者に一体何を委託しなければならないのでしょうか。

第十一条 住宅宿泊事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を一の住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。

(中略)

 第五条から前条までの規定は、住宅宿泊管理業務の委託がされた届出住宅において住宅宿泊事業を営む住宅宿泊事業者については、適用しない。

住宅宿泊事業法 第十一条より

上記の通り、委託する業務については第五条から第十条に定められているとされています。

(宿泊者の衛生の確保)
第五条 住宅宿泊事業者は、届出住宅について、各居室(住宅宿泊事業の用に供するものに限る。第十一条第一項第一号において同じ。)の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。

(宿泊者の安全の確保)
第六条 住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

(外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保)
第七条 住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対し、届出住宅の設備の使用方法に関する外国語を用いた案内、移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供その他の外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

(宿泊者名簿の備付け等)
第八条 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。
 宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を告げなければならない。

(周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明)
第九条 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、宿泊者に対し、騒音の防止のために配慮すべき事項その他の届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項であって国土交通省令・厚生労働省令で定めるものについて説明しなければならない。
 住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて前項の規定による説明をしなければならない。

(苦情等への対応)
第十条 住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない。

まとめると、以下の業務を委託しなければなりません。言い換えると、これらの業務は住宅宿泊事業者がやってくれます。

<※法第5条から第10条の規定>
・宿泊者の衛生の確保(清掃など)
・宿泊者の安全の確保(災害時の避難案内の作成など)
・外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保(外国語対応など)
・宿泊者名簿の備付け等
・周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(近隣への説明)
・苦情等への対応

なお、これらの業務を委託する場合、清掃はこの業者、安全確保はこの業者、というように事業者から複数の業者に分割して依頼することはできず、1つの管理業者にまとめて委託しなければなりません。

ただし、委託を受けた管理業者が一部業務を別の会社に委託すること(例えば清掃を専門業者に外注するなど)は可能です。これを再委託と言い、この方法によって管理業務を行っている管理会社もあります。

参考:管理業務の委託について/民泊制度ポータルサイト

根拠法令:住宅宿泊事業法住宅宿泊事業法施行規則

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