このページでわかること
・民泊で食事提供を行う場合、飲食店営業許可は別途取得する必要がある?
・民泊で飲食店営業許可を併せて取得することは可能?
・飲食店営業許可の必要ない範囲で行える食事提供方法は?
民泊のサービス企画を行う際、折角なら食事の提供を行いたいと考える方も多いと思います。
民泊に限らずホテルや旅館であっても、飲食物の提供を行う場合には食品衛生法に基づく飲食店営業許可が別途必要です。
飲食店営業許可を取得するには、安全・衛生的に飲食物の提供ができるよう、施設基準を満たす必要があります。民泊という営業特性上、これらの施設基準を満たすことは容易ではありません。
そこで、民泊で食事提供を行うことの可否や、方法についてまとめています。
そもそも民泊では食事の提供の概念がない
民泊という営業許可は住宅での宿泊提供という前提があるため、飲食物の提供という概念がありません。
そのため民泊を行おうとしている家屋で、飲食店の営業に必要な「飲食店営業許可」を取得しようとすると、思わぬ弊害やハードルが出てきてしまいます。
飲食店営業許可を取得する
食品の提供は人体の安全に直結するものですから、施設や安全衛生について厳しい基準が設けられています。
例えば施設基準の全体像(食品衛生法)にもある通り、手洗い器を設置する必要があったり、排水や換気に関する設備を設ける必要があったりします。民泊の届出を行うに想定される一般的な戸建て住宅では、こうした設備要件を満たすことは簡単ではありません。
また、飲食店営業許可では調理場が区画される必要があるとされています。一方、民泊の届出には住宅設備の要件としてキッチンを始めとした水回りの設置が必須です。この民泊届出上必要になるキッチンと、飲食営業許可における調理場が併用できるかなどを整理し、担当行政と協議する必要も出てきます。
そのため、民泊で飲食店営業許可を取得するのは不可能ではないものの、一般的な住宅では、その構造上あまり現実的ではないと思った方がいいでしょう。
なお、家主居住型民泊で飲食店営業許可を取得しようとする場合の規制緩和について、厚生労働省より以下のような案内が掲出されていますので参考にしてください。
参考:家主居住型民泊施設における飲食店営業の許可に係る施設基準の取扱いについて
飲食営業許可の必要ない範囲で食事を提供する方法
しかし、やはり他施設の差別化を図って稼働率を上げたいという気持ちもありますよね。その方法の一つが飲食物の提供になるわけですが、飲食店営業許可の必要ない範囲でどのような食事提供方法があるでしょうか。
デリバリーやテイクアウトしたものを提供する
まず思いつくのはUberEatsなどを利用したデリバリーや出前、もしくはテイクアウトした飲食物の提供です。
宿泊者自身が注文し、受け取り、そのまま食べるという風に、宿泊者ですべて完結する行為であればなんの問題もありません。しかし、この過程に事業者が介入(例えば注文と受け取りは事業者側で行うなど)するとなると話は変わってきます。
こうした事業者が注文した出前をお客さんに提供するという行為は、自治体の解釈によるところも出てきますが、基本的には食品衛生法上違法な行為と思った方がいいでしょう。
例えば、千葉市の「食品営業許可が必要な営業」で解説されている通り、コンビニエンスストアで買った弁当を従業員が電子レンジで温める行為も「調理」とみなされるため、飲食店営業許可が必要とされています。
手を加えなければ調理にはあたらないと思ってしまいますが、あくまで判断は管轄行政が行います。事業者が注文した出前を提供する運用などを検討している場合は、事前に担当課へ問い合わせを行いましょう。
宿泊者と一緒に作ったものを食べてもらう
一緒に作ったものを食べてもらうという形で食事を提供するのは問題ないでしょう。
お客さんも一緒に作る工程に加わっている以上、衛生上の管理等はお客さん自身の責任とも言えますし、料理教室などでは特に営業許可が必要ないのと同じ解釈ができそうです。
体験的な付加価値がつけられるので、サービスの差別化の観点からも検討したい運営方法だと言えます。
根拠法令
根拠法令:食品衛生法
根拠法令:住宅宿泊事業法
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