このページを読んでわかること
・ダイナミックプライシングとは何か
・ダイナミックプライシングのメリットデメリット
・民泊や一棟貸しでダイナミックプライシングを用いるときの注意点
民泊や一棟貸しの営業を行う際、最も重要な検討事項の1つが価格設定です。「値決めは経営」という有名な言葉があるように、当然ながら価格設定は売上に直結します。
単に高単価を設定すればいいというものではなく、投資回収や競合の価格、利用者が支出できる金額を総合的に考慮し、適正な価格を設定することが重要です。
例えば物を販売する事業であれば「1個100円」というようにシンプルな一律単価設定になっていることが普通ですが、民泊や一棟貸しなどを含む旅行業に分類される業種については、季節の繁閑による需要の差に応じて価格を変動させる手法が一般的に取られています。
こうした価格戦略を、「ダイナミックプライシング」と呼びます。こうした横文字で見るとなんだか小難しい概念に思ってしまいがちですが、お盆やGWは通常よりも料金を引き上げる、土曜日は平日よりも高い料金設定をするというように、宿泊業では従来からごく当たり前に取られてきた価格設定方法です。
近年ではビッグデータを使用したAI(人工知能)の発達により、機械的に予測をした結果をもとに自動で価格設定に反映させる仕組みなども活用されています。
では、民泊や一棟貸しでこの「ダイナミックプライシング」を行おうと思った場合、どういったメリットやデメリットがあり、どんなことに注意してこの手法を用いるべきでしょうか。
そもそも「ダイナミックプライシング」って?
冒頭で簡単に説明しましたが、ダイナミックプライシング(dynamic pricing)は日本語に訳すと「動的価格設定」「変動料金」となり、一律ではない料金設定のことを指します。
ホテルの価格設定の他、航空券の料金などが代表的な例です。また、近年ではディズニーランドを始めとしたテーマパークでも日によって細かく料金設定が分けられるようになったり、長期休暇中の新幹線の運賃が通常より高く設定されたりと、様々な業種に取り入れられています。
このように、ダイナミックプライシングは需要と供給の差が年間通じて顕著に現れる旅行業界で活用されるイメージが強いのですが、例えばスーパーで夜になるとお惣菜が値引きになっていたり、居酒屋のランチタイムでお得な定食が食べられたりというのもダイナミックプライシングに当たります。こう考えると極めて身近な価格設定の考え方に感じるのではないでしょうか。
ダイナミックプライシングのメリット・デメリット
ではダイナミックプライシングの概要がわかったところで、メリットやデメリットについても整理しておきましょう。
メリット
売上の最大化
なんといっても最大のメリットは売上の最大化です。需要の高い時期には通常よりも高い金額で販売することで売上の積み増しを行い、逆に需要の少ない時期には低い金額で販売することで余剰在庫を削減することで、売上の最大化が可能になります。
新規顧客の創出
宿泊施設を選ぶ際、他の施設と比較したときに安い方で予約する人は非常に多いです。じゃらんなどで宿泊施設を検索する際にも、「安い順」でソートして宿を探す人は多いのでないでしょうか。
ダイナミックプライシングを活用して、例えば需要の見込めない時期には他の競合施設よりも安くしておくことで、「価格で選択」する層へのアプローチが容易になり、新規顧客の創出につながる可能性が高まります。
デメリット
過剰な価格変動は顧客離れになってしまうことも
ダイナミックプライシングの利益を追求しようとするあまり、過度に価格変動すると顧客離れを引き起こしかねません。
例えば需要の見込める繁忙期だからといって通常の何倍も価格を吊り上げるようなことをすれば、予約をする側としては悪印象に映りかねませんし、仮にそれで予約を獲得できたとしても、料金に見合ったサービスを提供できなければ「ただ高いだけの宿泊施設」という口コミがついてしまう危険性も。
また、需要が少ないからといって安くしすぎると、宿泊施設自体の価値の低下につながってしまう恐れもあり、本来販売したい価格での予約が獲得しづらくなってしまう事態も考えられます。
このように、目先の利益だけでなく長期的な影響や価格戦略も考慮しなければなりません。
コストやリソースがかかる
AIなどを活用した自動のダイナミックプライシングの導入には当然のことながら多額の費用がかかり、民泊や一棟貸しの投資効果として見合う価値が得られるかは慎重に検討する必要があります。
また、自分で地道に価格変動を行うとなると、必要な情報を収集しそれを価格に反映したり、その効果測定を行ったりと、価格の最適化には想像以上の時間と手間が必要になることは考えておかなければなりません。
ダイナミックプライシングを行う場合の注意点
最後に、民泊や一棟貸しの営業においてダイナミックプライシングを行う場合の注意点を見ておきましょう。
過剰な価格のつり上げは行わない
デメリットの項でも取り上げたように、売上を伸ばしたいばかりに過剰に価格を吊り上げると、顧客に悪印象に映り、顧客離れを引き起こす可能性があるため、控えましょう。
最近ですと不作によってお米の価格がだいぶ上がりましたが、ネット上には「パスタが主食になった」なんて言ってる人もいましたね。やむを得ない事情があったとしても、価格の引き上げというのは消費者にとってはシビアな受け取られ方をしてしまうものです。
こうした事態を避けるため、民泊や一棟貸しにおいては周辺の競合施設とのバランスを取ることが大事でしょう。また、「その宿泊料金に見合った価値を提供できているか」を宿泊者目線で考えることも大事です。
営業上限日数を気にする
民泊を「住宅宿泊事業法」に基づいて届出で行う場合、年間180日の営業日数上限があります。例えば閑散期にも予約を獲得したいからと安く設定したはいいものの、その時期でこの営業日数を使いすぎると、年間の売上が想定より下がってしまうかもしれません。
営業日数がある場合の予約獲得は、高単価な曜日やシーズンを優先した方が売上金額は当然のことながら高くなります。
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