
このページでは、民泊を旅館業許可を取得して行う場合の許可要件を解説します。
住宅を宿泊施設として貸し出す「民泊」。民泊を行う場合には、①旅館業許可を取得して行う②住宅宿泊事業の届出を行う③特区民泊の認定を得て行うの3つの方法がありますが、特区民泊は営業できる地域が限られているため、実際には①旅館業法 もしくは ②住宅宿泊事業法 のいずれかを選択することになります。
それぞれ許可(届出)基準や営業の条件などは異なるため、どの方法で営業すべきかはケースバイケースですが、一般的に旅館業法の許可取得は住宅宿泊事業の届出よりもハードルが高いと言われます。どのような面でハードルが高いのか、その許可要件について見ていきましょう。
旅館業法上は3つの要件が定められている
旅館業法第3条2項には、施設または申請者が一定の場合に該当するときは、許可を与えることができないという基準が定められています。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
旅館業法 第3条2項
言い換えると、以下に該当しないことが許可の要件であるということです。
①施設の構造設備が一定の基準に満たない
②施設の設置場所が公衆衛生を害する
③申請者が欠格要件に該当する

①施設の構造設備基準
施設の構造設備基準は、旅館業法施行令第1条に規定されています。民泊の営業形態となることの多い簡易宿所営業については第2項に定められています。
2 法第三条第二項の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
旅館業法施行令 第1条2項
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
まとめると、以下の構造設備基準を満たす必要があります。
①客室の延べ床面積が33㎡以上(定員10名未満の場合は定員×3.3㎡以上)
②2段ベッドの場合は上下1m以上の間隔をあける
③換気・採光・照明・防湿・排水設備・入浴設備・洗面設備・トイレを有する
④条例の基準を満たす
②施設の設置場所が公衆衛生を害する
施設の公衆衛生については、都道府県が条例に定める宿泊者の衛生のために必要な措置の基準を満たしていることが必要です。
③申請者が欠格要件に該当しない
申請者についての主な欠格要件(許可を与えることができないと旅館業法上定められている条件)は、破産や前科、暴力団と関わりなどです。
一 心身の故障により旅館業を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
旅館業法 第3条2項
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 拘禁刑以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくはこの法律に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
四 第八条の規定により許可を取り消され、取消しの日から起算して三年を経過していない者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から起算して五年を経過しない者(第八号において「暴力団員等」という。)
六 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が前各号のいずれかに該当するもの
七 法人であつて、その業務を行う役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
八 暴力団員等がその事業活動を支配する者

施設の周囲100m以内に学校がある場合
また、続く条文では、施設の周囲100m以内に学校などの施設がある場合についても同様に不許可とする場合があることを定めています。
3 第一項の許可の申請に係る施設の設置場所が、次に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合において、その設置によつて当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。
旅館業法 第3条3項
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学を除くものとし、次項において「第一条学校」という。)及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園(以下この条において「幼保連携型認定こども園」という。)
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除くものとし、以下単に「児童福祉施設」という。)
三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第二条に規定する社会教育に関する施設その他の施設で、前二号に掲げる施設に類するものとして都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下同じ。)の条例で定めるもの
ただし、100m以内に学校などの施設があるからといって直ちに旅館業ができないというわけではなく、意見照会などを経て教育上の風紀を乱す恐れがないと判断されれば営業は可能です。
まとめ:旅館業法は住宅宿泊事業法にない要件を満たす必要あり
旅館業法では上記のような住宅宿泊事業法にはない要件を満たす必要があります。特に構造設備の面では、住宅宿泊事業ではトイレや風呂・洗面、キッチンといった水回りの設備があれば足りるところ、衛生上の諸要件を満たさなければならず、これが旅館業法が住宅宿泊事業法よりもハードルが高いと言われる理由の1つです。
実際には旅館業法上の規定だけではなく、建築基準法など関連法令の基準も加わってきます。これらの諸要件を満たせるか、検討当初にきちんと確認しておくことが大切です。
なお、最近では自治体によって、住宅宿泊事業も厳しい要件や制約を課される場合がありますので、事前の確認は必須となっています。

KC行政書士事務所では、民泊を始めたいけど、どの許可が適しているのかわからない…という方にも各種要件や営業の有利不利を踏まえてアドバイスさせていただきます。ご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。