このページでわかること
・民泊や貸別荘に宿泊する人は宿泊費をどれくらい重視している?
・宿泊施設形態ごとの消費額内訳
民泊や貸別荘を計画する際には「利用客はその施設に何を期待しているのか、どんなことを目的として宿泊施設を選定しているのか」といった旅行客の意図を知っておくことも大事ですよね。
利用客の意図を正確に把握するのなら宿泊したお客さん一人一人に直接聞くのが最も精度の高い情報ですが、開業前にそんなデータを集めることは現実的ではありません。そんな時に活用したいのが、観光庁の公表している旅行・観光消費動向調査です。
参考:旅行・観光消費動向調査
こちらのデータを読み取ることで、ある程度の傾向を探ったり、予測を立てることは可能です。
そこで、本記事では旅行・観光消費動向調査の結果を活用して、旅行客が旅行費用の内訳として何にどれくらい使っているのかを施設形態別に算出し、業態によってどのような違いが表れたのかをグラフにしました。
また、その結果から旅行客が宿泊先を選ぶときにどのようなことを目的として宿泊業態を選定しているのか、データから読み取れる意図を考察しました。民泊や貸別荘のターゲッティングの際に役立てていただけますと幸いです。
宿泊施設業態別の旅行消費内訳割合
では早速2023年の結果を見ていきましょう。
公表されている施設形態すべての旅行消費内訳と、宿泊施設全体の平均をグラフにしました。
今回特に注目したいのは、[宿泊施設全体の平均]と、[ホテル]、[旅館]、[ペンション・民宿・貸別荘]、[民泊]の4業態の違いです。
ちなみに、消費内訳の「参加費」の項目は、団体旅行やパックツアーなどで使用した費用となっています。
旅行費用総額に占める宿泊費用の割合は全施設平均で25%程度
まず、世の中の人々は旅行費用の中でホテル代にどれくらいお金を割いているかと言いますと、約25%という結果でした。大体4分の1ほどを宿泊費に割いているということですね。
旅行でトータル5万円つかった場合、12,500円位が平均的な宿泊代金になるわけです。皆さん大体そんな感じで旅行の予算を計画するのではないでしょうか。
ホテルは全施設平均と概ね同様
ホテルは全施設の平均とほぼ同じような内訳となっています。
宿泊施設としてホテルを選ぶ人は圧倒的に多いですから、当然といえば当然です。スタンダードな旅行=ホテル泊ということですね。
旅館は宿泊費にかける割合が最も高い
旅館は宿泊費にかける割合が37%近くと全施設の中で最も高いです。また、飲食費にかける割合が11%と全施設の中で最も低いです。
旅館の場合、1泊2食付きなど夕食や朝食を宿泊先で食べる旅行客が多いことから、宿泊先以外で使う飲食費が少なくなっていることが原因として考えられます。
また、旅館を選ぶ旅行客は、宿の他にあれこれと立ち寄って楽しむというよりも、宿での滞在を楽しむ旅行客が多い傾向にあると読み取れます。
ペンション・民宿・貸別荘は宿泊費にかける割合が高め
ペンション・民宿・貸別荘の宿泊費にかける割合は33%と比較的高い割合にあります。一方で飲食費にかける割合も17%と全施設の中でも高割合にあります。
つまり、貸別荘などを選ぶ旅行客は、宿泊先には食事を期待していないということが予想できます。貸別荘という非日常の空間、そこでの滞在自体を目的とした旅行をする意図があるのではないでしょうか。
飲食提供のない貸別荘でも宿泊費にかけるお金は惜しまない傾向があるといえるでしょう。
民泊は宿泊費にかける割合が低い
民泊は宿泊費にかける割合が18%と全施設の中でも低いです。また飲食費にかける割合も低いです。
一方で、交通費にかける割合が33%と非常に高いです。また、娯楽等のサービス費にかける割合は14%と突出して高く、全施設平均の2倍の割合となっています。
このことから、民泊を利用する旅行客はできるだけ宿泊費を抑えて、アクティビティや施設利用等の体験に重きを置いた旅行、また遠方に旅行をして交通費の出費が嵩む際に宿泊費を抑える手段として活用されている傾向が強いと推測されます。
貸別荘という営業スタイルで行くのか、民泊という営業スタイルで行くのか
以上から、単純に一棟貸しといっても、貸別荘という形態で運営するのか、民泊という形態で運営するのかによって利用客の宿泊施設への目的や期待することは大きく異なることがわかります。
ここで注意したいのは、貸別荘と民泊の違いには様々な定義がありますが、この統計結果については営業許可上の区分の話ではなく、あくまでアンケートの回答者が「貸別荘」なのか、「民泊」なのかを判断しているということです。
つまり、営業許可上は民泊であっても、回答者が「貸別荘」と回答していればそれは貸別荘のアンケート結果となっているのです。では、回答者はどうやって貸別荘なのか民泊なのか判断しているのでしょうか。営業許可上で民泊なのか旅館業許可なのかなどということは一切気にしていないはずですよね。
回答者はきっと宿泊した施設にホスト(つまり居住者)がいたかどうかということをもとにこのアンケートに答えているでしょう。
つまり、実際の営業許可云々は置いておいて、営業スタイルによってターゲット層や価格設定は変えるべき、ということが言えると思います。具体的にはホスト不在型として営業する場合には、そこで宿泊客が楽しめる様なレジャー要素を盛り込んだりして滞在の満足度を高める、ホスト滞在型として営業する場合は最低限宿泊施設に期待する清潔感や快適性に重きを置いて宿泊費用はできるだけ低価格に抑えるなどの対策が考えられるでしょう。
参考データ
参考データ:2023年年間 集計表(確報)
コメント