民泊や貸別荘など宿泊施設の営業にあたっては、送迎サービスの導入を検討することもあるかと思います。
都心や街中などアクセスの良い場所・公共交通機関が整備された場所に開業する場合は導入不要かと思いますが、所在地によってはバスの本数が1日に数本しかないなど利便性が悪い場合や、車でなければアクセスが不可能ということもあるかと思います。
宿泊施設に送迎サービスを導入する場合、旅館業許可や住宅宿泊事業法といった宿泊業自体の許認可のほかに何か別途で許可や届出は必要なのでしょうか。
結論:無償なら許可不要

まず結論として、無償であれば許可は不要です。
「車でお客さんを運送する」という行為を規制するのは「道路運送法」という法律です。この法律は、基本的にタクシーやバスといった「旅客自動車運送」の営業をする場合の規定を定めた法律で、輸送の安全の確保や利用者の保護といった目的のために制定されています。
令和6年3月1日に発出された「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」では、道路運送法上の許可又は登録を受ける必要のない運送行為について定められています。
ここで、ホテル・旅館等の宿泊施設の利用者を対象とする運送について、「宿泊施設が、駅・空港・港等と宿泊施設との間で、無償の運送サービスを行う場合」については道路運送法の許可・登録を要しないとされています。
送迎途中にスーパーやコンビニに立ち寄ることも可能
宿泊客の依頼や要望によって、送迎途中にスーパーやコンビニといった商店に立ち寄ることも可能です。
また、チェックアウト後に近隣施設や観光スポットなどに送るといったケースも考えられますが、無料サービスとして行う運送については社会通念上常識的な範囲のものは許可・登録が不要とされています。

利用料等を徴収することはできないのか
以上のように無償で送迎を行う分には許可が不要であることがわかりました。
しかし、いざ送迎するにも、車両の準備に加え、ガソリン代・維持費など決して安くはない費用がかかり、送迎に係る人的コストも無視できません。
では利用料等を収受することが一切できないのかというと、ガイドラインでは以下のように説明されています。
運送行為が無償で行われる場合においても、ガソリン代等の「実費」を受け取ることは許される。この場合には許可又は登録は不要である。
つまり、一切お金を取ることができないわけではなく、送迎に係る実費分の請求は可能です。この実費の範囲には、ガソリン等の燃料代、道路通行料、駐車場料金、保険料、レンタカー代などが含まれます。
また、宿泊施設が送迎サービスを導入する場合において、当該車両が主として送迎を要する利用者のためだけに購入・維持されるときはこれを鑑み、実費の範囲に車両償却費や車検料等の車両維持費を含めることも差し支えないとされています。
送迎利用者に対して宿泊料金に差額を設けてよいか
では、実際に送迎を利用する人に対してどのような形で実費分を請求すればいいでしょうか。最もスマートなのは予約時点で送迎有無の希望を聞いておき、宿泊費の支払い分と一緒に収受することでしょう。
この点について、ガイドラインでは「運送サービスの利用の有無によって宿泊料に差を設ける場合には、当該差額が運送サービスに要する実費の範囲内であれば、許可又は登録は不要である」としています。つまり宿泊料として一緒に請求して問題ありませんが、この場合、宿泊料と運送サービスの実費相当額負担分を明確に分け、必要に応じ利用者等に説明できるようにしておくことが望ましいとされています。
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